学校教育レポート

更新:2019年05月20日 15:30

日本将棋連盟では、主催新聞社ご協力の元、タイトル戦プロ棋士訪問授業を行っております。
今回は第77期名人戦第2局、萩市教育委員会のご協力で、相島小中学校へのプロ棋士訪問授業が実現いたしました。その模様をレポートいたします。(夏芽)

萩市相島小中学校を訪問

佐藤天彦名人に豊島将之二冠が挑戦する第77期名人戦七番勝負第2局は、山口県萩市「松陰神社(立志殿)」で行われ、挑戦者の豊島二冠が107手で勝利。シリーズ成績を2勝0敗としました。

その対局の翌日、現地の大盤解説を担当した阿部隆八段は船に乗って相島へと向かいました。相島は日本海の沖合、約14キロ先に浮かぶ火山のひとつ。約7万年前に噴火した溶岩台地のため、遠目で島全体を見ると平らな形状をしています。小さな島ですが農業や漁業が盛んでスイカ、サツマイモ、サザエ、アワビなどが特産品。萩港から相島に向う定期船は1日3便しかありません。


今回、阿部八段は相島にある「萩市立相島小・中学校」を訪問しました。児童・生徒数はわずか4人(兄妹、姉弟の2世帯)。それぞれ学年が違うため、授業は複式で行われ、教科によっては島外から非常勤の先生が教えに来ます。教室の窓からは日本海が見え、廊下には萩藩士の「吉田松陰先生の教え」が掲示されており、訪問した際はいまの時代を象徴するかのように、タブレット端末を使った授業もありました。ほかにも運動会や、他校との交流学習なども行っています。

この日は3時限目、4時限目に「総合的な学習の時間」と題し、将棋の授業を設けていただきました。前半は阿部八段の講義。生徒たちは普段、本やニュースで将棋のことを知ることはあっても、プロ棋士の話を生で聞くのは初めてです。阿部八段は自分の生い立ちを振り返りながら、将棋との出会い、プロ棋士になったきっかけ、プロの将棋界はどういう場なのかなど、ユーモアを交えながら分かりやすい言葉に置き換えて説明しました。途中からは生徒たちが用意した質問にひとつひとつ回答。児童・生徒4人とも最後まで姿勢を崩さず、阿部八段の話に聞き入っている姿が印象的でした。

授業後半は実際に将棋の盤、駒を使っての対局。大盤では簡単な詰将棋を出題しました。生徒たちは阿部八段が駒を並べる手つきに興味津々。代表して中学3年生の大森君が盤を挟みましたが、見よう見まね、慣れない手つきで駒を置く姿がとても初々しかったです。大森君はスマートフォンの将棋アプリで遊んだことがあるらしく、対局中は阿部八段も「それ、いい手じゃないですか!」と褒め言葉を連発していました。

授業のあとは生徒たちと一緒に給食、この日はクリームシチューと伴三糸(バンサンスウ)をいただきました。家でも同じ年頃の子どもがいるという阿部八段は、好きなテレビ番組や趣味の話題でコミュニケーションを取り、生徒たちとの距離もすぐに縮まりました。普段ダイビングをするということもあって、日本海の綺麗さはお気に入りだったようです。授業の最後は、生徒たちに「皆さん目標を持って、早く好きなもの、集中できるものを見つけられたらいいですね」とメッセージを送り、14時発の最終便で相島をあとにしました。

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