弦巻勝のWeb将棋写真館

第1期竜王戦

更新: 2016年1月13日

十段戦が発展的解消となり、新たに竜王戦となって昭和63年に第1期七番勝負が開幕しました。この頃から将棋界は少し変わった風に思います。
竜王戦が将棋界での最高棋戦となり、その賞金額も話題になっていました。

コンピューターを操る島朗さんがアルマーニの服装で挑戦者に出てきて、対局姿も絵として珍しいものでした。対局場の自室で袴を付ける米長先生が後ろのハンガーに掛かっているアルマーニのスーツを指し、
「俺もこれで対局したいよ。」
と語っていたのを思い出します。
和服とスーツの対局に米長先生は違和感を覚えていたのでしょう。
その対局に同じ柄のアルマーニのスーツも用意していた米長先生に驚いた記憶があります。

島朗先生には思い出が有ります。ヨーロッパにタイトル戦の撮影で行った時、関係者の集まるホテルの控室から我が家に電話をしなくてはならなくなった僕。今の時代ですと携帯電話で外国から日本に掛けるのは簡単ですが、当時は番号をたくさん回さないと掛けられません。
その作業に苦労している僕を見て、側に居た島先生、チャッチャとかなりの桁数の番号を回し
「弦巻さん、掛かりました。どうぞ。」
「えぇ!何で僕の家の番号知っているの?」
「僕、弦巻さんの家に一回電話した事有りますから覚えていました・・・。」
酔っぱらっていた僕は、いやぁ~、将棋指しは皆頭ええなぁ~、と思った事を覚えています。

掲載写真についてのミニ解説(サイト編集部記)

写真上から順に(1)~(3):
第1期竜王戦七番勝負第4局(昭和63年11月16、17日)の模様。第1期竜王戦は、決勝トーナメント準決勝戦が三番勝負でそれぞれ行われ、米長邦雄九段が高橋道雄十段を2勝1敗で下し、勝ち上がり、一方の準決勝戦は、島朗六段が中原誠前名人を2勝1敗で下し、決勝七番勝負進出を決めた。
七番勝負は、第1局の愛知県名古屋市を皮切りに開幕し、第4局は、金沢市「金沢ニューグランドホテル」で行われたが、島六段が米長九段に3連勝とし、初代竜王の座を獲得するまであと1勝と迫っていた。
写真(1)は、2日目開始に立会の五十嵐豊一九段が封じ手を読み上げているところ。
写真(2、3)は、終局後の感想戦の様子。
第4局は、午後2時6分、68手で後手の島六段が勝ち、4連勝で初代竜王の座を射止めた。
シリーズは、島六段がスーツで挑み続けた点も話題となった。
写真(4、5):
第1期竜王戦就位式が平成元年1月25日に東京・大手町の読売新聞社で行われた。写真(4)は、大山康晴十五世名人のお酌をうける島朗竜王。写真右は、小林與三次読売新聞社社長。
写真(5)は、竜王優勝杯を抱えての記念撮影。島初代竜王は、タキシード姿で就位式に現れ、列席者を驚かせた。
なお、就位式にはテレビカメラも入り、当時としては大変珍しかった。その模様は、日本テレビで放映された。
写真(6、7):
島朗竜王の自宅でのカット。島竜王は、当時からパソコンを用いて将棋の研究をしていた。現在では、多くの棋士が当然のようにパソコンを用いているが、当時は先駆けであった。PCモニタやマウスの形状からも時代が伺える。写真(7)は、着替えをしているところであるが、ベルトでなくサスペンダーでパンツを吊るのは、その当時の流行であった。