第9回将棋文化振興議員連盟総会 開催報告

更新:2023年07月04日 18:00

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 令和5年6月13日(火)に、超党派の国会議員で組織される「将棋文化振興議員連盟」の第9回総会が東京都千代田区の衆議院議員会館で開催され、国会議員(代理含む)33名が出席されました。前回の第8回総会から、約3年半ぶりの開催となりました。

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山東昭子議員連盟会長        羽生善治将棋連盟会長

事務局長の関芳弘参議院議員の司会、将棋文化振興議員連盟会長・山東昭子参議院議員(写真左)より開会のご挨拶があり、続いて日本将棋連盟会長・羽生善治九段(写真右)より「解決すべき課題が沢山あるので、皆様にお力添えいただきたい」と挨拶し、山東会長にはブラジルに大盤をお送りいただいたことへの感謝を伝えさせていただきました。

その後、役員の承認が行われ、日本将棋連盟から報告と要望が発表されました。

〇前回(第8回)議員連盟総会の報告と将棋連盟の活動報告

日本将棋連盟・佐藤康光前会長から次の内容の報告を行いました。

[前回(第8回)議員連盟総会の報告]
・国際将棋フェスティバル
日本博イノベーション型プロジェクトの助成金申請を行い、採択を受けて「国際将棋フェスティバル2021」を開催した。
・学校教育への将棋導入
将棋連盟から各学校へアプローチを行い、クラブ活動等で実施している。
道徳の授業への導入は、道徳の教科書に将棋が掲載されており道徳のテーマについては学校毎の判断になる。学校教育への導入は引き続き拡大していく。
・将棋に関する学術研究に対する研究費補助
文部科学省より「科研費」制度をご教示いただいているがコロナ禍で進行が止まっていた。今後取り組んでいく。
[将棋連盟の活動報告]
・新型コロナウイルス感染症の際、棋士、女流棋士の対局は臨時対局規程を制定する等対策を行い、大きな影響を出さずに行うことが出来た。アマチュア大会は感染拡大を防止のため中止を余儀なくされるものも多かったが、オンラインでの実施に変更して行うことが出来た。今年になってからは直接対面しての大会に戻りつつある。将棋は人と人とのつながりが大事なので徐々に増やしていきたい。
・2024年の創立100周年の一大プロジェクトとして東西将棋会館建設がある。
東京は千駄ヶ谷の駅前に、関西は高槻市へ移転する。「将棋を次の100年に」を標語として、より一層の将棋文化の配信、将棋ファンとの交流の場の充実、地域社会との融合を目的に将棋界の総本山として将棋文化の振興発展に努める。
・令和5年6月10日「駒テラス西参道」がオープン。
渋谷区との連携事業で、区が明治神宮鎮座100年を機に進めている再整備事業の1つ。「観る将の聖地」を目指し、イベント・展示・映像配信等を行っていく。
・藤井聡太が27年ぶりに七冠を達成し、棋士への注目も高まり、コロナ禍の外出制限からファン層も変化していて、指す将棋ファンの他に観る将棋ファンが増えている。
観る将棋ファンも含めると将棋人口は1000万人と考える。
・タイトル戦の現地解説会には1000人を超える方々が参加、棋士の食べたおやつ等が注目され、地方創生・地域活性化の一助になっている。
・ベトナムでの海外対局も行い、今後は海外への普及も考えていきたい。
・ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦が創設され女流棋戦も8大タイトルとなり、達人戦、ABEMA将棋トーナメント、SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦等、様々な視点からの棋戦も増えた。
・新型コロナウイルスの影響でリアルの大会は減少したが、アプリを使った将棋は増加。今後はリアルの大会を増やしていく。
・将棋を通じて健全な少年少女の育成を目指し、女流棋士養成機関でもある研修会は、関西、東海、九州に加え2020年に北海道、2021年に東北に設置。少年少女の育成、将来の棋士・女流棋士を目指す環境が整ってきた。各地に根ざした環境作りに努めていく。
・「盤上に感謝と最高のコミュニケーションを」「将棋は変化無限の最高峰」をスローガンに、将棋界の発展に邁進していく。

〇将棋連盟からの要望

[助成金・補助金について]
日本将棋連盟・佐竹康峰常務理事より次の内容の説明を行った。
・東西将棋会館建設への助成金
・国際将棋フェスティバルへの助成金
[全国自治体への将棋導入アプローチについて]
日本将棋連盟・羽生善治会長より次の内容の説明を行った。
・日本将棋連盟では毎年自治体に参加いただき「将棋サミット」を開催している。
・将棋を広く普及するには自治体の方の協力が不可欠と考えているため、周年・記念事業の際にはお声掛けいただきたい。
[将棋の無形文化財登録について]
日本将棋連盟・羽生善治会長より次の内容の説明を行った。
・将棋は日本に入ってから少なくとも1000年経っているため、無形文化財に該当するのではないかと思う。現在は手を使った技術が調査対象だったと聞いているが、国民娯楽も無形文化財の対象になると思うので、将棋も調査対象としていただきたい。藤井聡太七冠の活躍等で将棋界は盛り上がってはいるが、将棋を指す人は減っているため危機感を持って対応していかなければならないと思っている。
[棋戦名称の商標取得について]
日本将棋連盟・清水市代常務理事より次の内容の説明を行った。
・知的財産の重要性を痛感し、2018年より日本将棋連盟の名称や連盟公式キャラクターであるSHOちゃん等の商標登録出願を行ってきた。
・棋戦の安定した運営と存続をはかり、共同主催者や協賛社に安心してスポンサードいただくべく、2019年からは、棋戦名についても商標登録を目指している。
・先達が作り上げてきた将棋の歴史、伝えてきた技術、語り継がれる精神がすべて込められた棋戦は、日本将棋連盟にとってかけがえのない財産であり、私たちが次の世代に引き継がなければならない財産である。

〇日本将棋連盟からの要望について

文部科学省担当者、経済産業省担当者より説明があった。

[助成金・補助金について]
東西将棋会館建設への助成金
文化庁では該当する助成金はない。他の省庁も確認したが建設そのものに関する支援はない。
国際将棋フェスティバルへの助成金
日本博採択事業で、昨年度から日本博2.0と衣替えしている。2025年大阪関西万博を目指して年間を通じてインバウンド事業に的確に答えていくもので、「日本の美と心」で2025年に向けて日本の文化資源を磨き上げていく事業。日本将棋連盟は来年100周年等、様々な契機になることがあるため今後相談していきたい。
その他の補助金として、伝統文化子ども教室や国民文化祭がある。こちらは現在も支援を行っている。
[全国自治体への将棋導入アプローチについて]
高槻市と包括的協定を締結する等、将棋連盟と全国の自治体と先進的取り組みをされていると思う。棋士の出身地、駒の生産地等、将棋につながりのある自治体と
連携されていくのが良いと思う。
伝統文化子ども教室等で連携していくのも良い。
[将棋の無形文化財登録について]
ユネスコ無形文化遺産登録を目指すということで書道・華道等色々な分野から調査を行ってもらいたいと要望が来ている中で、多数の要望の中からどうしていくか検討させていただきたい。また平成29年度に生活文化国民娯楽に関する意識調査を行い、将棋もその中の1つだったため調査はしている。

〇出席議員からのご意見

・山東昭子参議院議員
棋士の書いたもの等を今までとは違った形(チャリティーオークション等)で販売することを検討いただきたい。将棋界が盛り上がり、にわかファンが増えている。その人たちを対象にした対局を観る場所を作り、お金をいただいても良いのではないか。新たな形で収入を得ることも必要だと思うので、検討いただきたい。
・櫻井充参議院議員
地元で全国将棋サミットを実施するにはどのようにしたら良いのかお教えいただきたい。地域おこしのために絶対的に良いことだと思う。
無形文化財登録は今年議連で行う活動としていくことを検討いただきたい。
建設への助成金は、自治体と組んで公共的な建物になると支援がある。また笹川財団等にも求めていかないと難しいと思う。
・赤松健参議院議員
将棋人口を増やすことを考えるとマンガが良いのではないか。出版社にコラボしたい旨をFAXで送るだけでも効果があると思う。やるということであれば相談いただきたい。
・古賀友一郎参議院議員
ファンは増えているが指す人が思わしくないということだが、奨励会はどのように変遷しているかお教えいただきたい。
商標登録については、海外への進出を検討していく場合、戦略的に行うべき。
・三宅伸吾参議院議員
無形文化財第2条を読むと将棋は入るため排除する必要ない。調査をする人と予算がないのであればこの議連で証拠を集めていく。議連の重点項目にすることに大賛成。
日本の素晴しい将棋文化の知的財産権の確立を応援していきたい。
・小森卓郎衆議院議員
無形文化財は我々の出番なので、尽力していきたい。
・山本左近衆議院議員
将棋は日本の文化として残していかなければならない。
小中学校で地域に部活動移行していく中で、地域において部活動を支えるまた地域の中で将棋を指す人をしっかり増やしていけるような仕組みを進めていただきたい。
将棋は文化でもあるがスポーツの側面もある。スポーツ庁との関わりはどうなっているのか。スポーツ的な側面からも我々がバックアップできるようなことはないかと思っている。
無形文化財については議連でしっかり声を上げて進めていく。

〇出席議員からのご意見に対する回答

・羽生善治会長
奨励会の状況
奨励会は年に1回入会試験があり、入会者数は変わっていない。下部組織として研修会があり、全国主要都市に展開している。支部・道場も続けていくのが難しい状況、この将棋のインフラの部分は改めて構築する必要があると思う。
普及の状況
普及指導員制度があり、教えるライセンスのある方が全国各地にたくさんいるので、部活動で将棋をやりたいという場合は将棋連盟にご相談いただきたい。
文化とスポーツ
歴史的背景があり、海外の将棋はカテゴリーとして頭脳スポーツだが、日本の将棋は
家元制度の中で世襲されてきたことから伝統文化というカテゴリーで文化庁に担当いただいている。カテゴリーの問題だけで、スポーツ的な側面もあり、今後もスポーツの分野の方々との交流も行っていけたらと思う。
・文部科学省担当者
無形文化財
本制度は令和3年に設けられた。文化芸術基本法において生活文化の振興を図ることが明記されていることを受けて念頭に置いたのが生活文化。これに関して調査研究が蓄積されてきたこと、たしなむ方が近年多く減少するということで保存する必要があるということでスタートした。国民娯楽も普及を図るものとして法律に定められているので、文化的価値はあるのはもちろんなので、制度のあり方について改善すべき点、良くしていくべき点は何かという姿勢で研究していく。
日本博以外の将棋に関する予算について
国民文化祭、高等学校将棋文化祭、伝統文化子ども教室等、
こども達に親しむ事業についてはしっかりと必要な予算を確保して将棋普及に寄与できるようにしていく。

 将棋文化振興議員連盟幹事長・原口一博衆議院議員より閉会のご挨拶があり、終了しました。

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将棋文化振興議員連盟幹事長・原口一博衆議院議員

・原口幹事長
無形文化財の登録を議連の1年の目標にしていきたい。(拍手承認)
私たちは芸術文化基本法を起草した。このもとは生活文化というよりも全ての国力
の基は芸術文化であるということ。芸術文化を振興することこそ国の礎を築く。芸術文化基本法の中にあるのは、我が国の伝統文化をしっかり支えること。将棋こそ我が国の伝統文化。生活文化に中心を置く考え方が悪いわけではないが、基本法を作ったときの思いは伝統文化にあるので、本議連の来年の総会では「無形文化財になりました」と報告できるようにしていきたい。山東会長のおっしゃられたように、将棋ファンはお金を払っても棋士を見に行きたいと思う。新しい形を検討いただきたい。また、アジア太平洋議員フォーラムを毎年行っている。そこで将棋を行うことも日本将棋連盟の皆さんと一緒に考えていきたい。また、文部科学省・経済産業省の方の丁寧な説明に感謝する。
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