加藤桃子 VS 里見香奈。2人の戦歴から見るリコー杯女流王座戦の展望(加藤女流二冠のコメントあり)

加藤桃子 VS 里見香奈。2人の戦歴から見るリコー杯女流王座戦の展望(加藤女流二冠のコメントあり)

ライター: 渡部壮大  更新: 2016年10月24日

女流棋界の頂上決戦

第6期リコー杯女流王座戦五番勝負が10月26日に開幕する。女流王座・女王の加藤桃子へ女流四冠の里見香奈が挑戦する、まさに女流棋界の頂上決戦だ。本コラムは2回にわたり、五番勝負の展望をしていく。

これまでの二人の女流棋戦での対局結果はタイトル戦で

・2013年 第3期リコー杯女流王座戦 里見3─1で奪取
・2014年 第7期マイナビ女子オープン 加藤3─1で奪取

他にトーナメントでは

・2011年 第5期マイナビ女子オープン準々決勝 里見勝ち
・2015年 第37期女流王将戦準決勝 里見勝ち

で里見から見て6勝4敗となっている。他には

・2007年 第1回世田谷花みず木女流オープン 里見勝ち
・2011年 里見香奈奨励会編入試験 加藤勝ち

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(両者は第3期リコー杯女流王座戦でも戦っている)リコー杯女流王座戦中継ブログより

過去の戦型は加藤の居飛車に里見の振り飛車となることが多いが、相居飛車の対局もある。最初の番勝負は2連覇中の加藤桃子女流王座に里見香奈女王・女流名人が挑戦した2013年第3期リコー杯女流王座戦のシリーズ。加藤が開幕戦を制したが、その後里見が連勝し第4局を迎えた。里見のゴキゲン中飛車に対し、加藤は角交換をする丸山ワクチンで対抗。加藤の動きに対し、うまく対応した里見が形勢をリードする。

【第1図は69手目▲8八玉まで】

第1図は終盤戦。ここから△7一玉▲6七銀△3八龍▲5九飛△6二玉と危険地帯から逃げたのが好着想で、手堅い勝ち方だった。以下は先手の追撃をかわしきり、3勝1敗で里見が奪取。加藤は第1期から持っていた女流王座を手放し、無冠に転落した。

その3ヵ月後、立場を変えて第7期マイナビ女子オープンで里見に加藤が挑戦した。このシリーズの開幕直前、里見は体調不良による休場を発表していたが、タイトルを持っていたマイナビ女子オープンには出場した。ただ、里見の指し手は精彩を欠く印象で、第3局を終え加藤が2勝1敗でリードする。第4局は里見の石田流に、加藤は銀冠穴熊に組む。里見が勝ち筋を逃し、徐々に形勢はもつれていく。

【第2図は136手目△2五歩まで】

第2図では▲6二馬と入っておけばまだ先手が残していたようだが、実戦は▲1六馬としたために△5三玉と上がって後手玉が捕まらなくなり、逆転した。シリーズは加藤が3勝1敗で制し、初の女王を獲得。

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(前期女流王座戦で開幕局を制した直後の加藤)撮影・渡部

思いっきりぶつかりたい

五番勝負を前に、あらためて加藤に質問をした。

 ――今期女流王座戦本戦トーナメントの印象は。

加藤「実力者が勝ち上がってきた印象です。誰が来てもおかしくないと思っていました」

 ――挑戦者の印象はいかがでしょう。

加藤「安定して強い。タフさは以前より増していると思います。いつも真剣な印象ですが挑戦者決定戦での打ち上げでは笑顔が多く、少しホッとしました」

 ――里見さんとの対局で印象に残るものは。

加藤「女流王座戦に関して言えば、第3期の1局目、石田流の将棋です。分からないところも多い中で手厚く指せていたと思います」

 ――今期は5期目の女流王座が掛かっていますが、相性の良さなど感じる部分は。

加藤「初出場させて頂き初タイトル獲得と一番思い入れが強いです。毎年、少しでも成長させてくださることに感謝しております」

 ――最後に、これを見ているファンへのメッセージをお願いします。

加藤「いつもご観戦頂きありがとうございます。第1期の頃のように、思いっきりぶつかって一生懸命指したいと思います。今後も宜しくお願い申し上げます」

後編では今期女流王座戦本戦を振り返るとともに、里見のコメントをお伝えする。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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