対振り飛車の囲い「5筋位取り」の特徴と手順とは?【玉の囲い方】

今回のコラムからは、対振り飛車の囲いについてまたご紹介していきます。以前のコラムでは、「舟囲い」、「左美濃」、「居飛車穴熊」と対振り飛車で代表的な三つの囲いをご紹介いたしました。今回のコラムからは、その三つの囲い以外にもどういうものがあるのかをご紹介していきます。まずは「5筋位取り」です。では、こちらはどういう囲いなのか? 先手側の駒だけを配置して、見ていきましょう。

囲いの特徴

第1図をご覧ください。

【第1図は▲5六銀まで】

平成29年11月2日、第76期C級2組順位戦、▲神谷広志八段ー△井出隼平四段戦です。歩を5五へ伸ばし、「位を取ったら位の確保」の格言通り、5六へ銀を配置して支えます。

第1図は、守りの銀を繰り出しているので、玉の囲いは薄いですが、5六まで進出させた銀を生かして、▲6六歩~▲6五歩と一歩交換をしたり、▲3七桂~▲4六歩~▲4五歩と仕掛けていったりと、さまざまな指し方ができます。また、銀が5六にいますので、振り飛車側から、なかなか△4五歩と伸ばすことができないところも大きなポイントですね。

▲神谷ー△井出戦は、第1図から△6三金▲3七桂△5二飛▲4六歩△5四歩▲同歩△同銀▲5五歩△4三銀▲4五歩(第2図)と進み、以下153手の大熱戦の末、神谷八段が勝利を収めました。

【第2図は▲4五歩まで】

それでは、5筋位取りを組むまでの手順を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順

初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右(第3図)。

【第3図は▲5八金右まで】

この手順はどこかで見た記憶はありませんか? そうです。「舟囲い」を組む手順とまったく同じです。対振り飛車の囲いは、ほとんどこの舟囲いから発展させていくと言ってもよいでしょう。第3図から、▲9六歩、▲2五歩、▲3六歩、▲6八銀、▲5七銀左(第4図)。

【第4図は▲5七銀左まで】

これも、以前ご紹介いたしました、舟囲いでの「急戦」の発展形と一緒ですね。急戦のときは、ここから▲4六銀~▲3五歩や、▲4六歩~▲4五歩~▲3七桂として戦いを仕掛けていきます。一回、▲6八金上と上がる手を入れることも多々あります。

5筋位取りの場合は、ここからすぐに戦いを目指すのではなく、もう少し駒組みを進めます。第4図から、▲5五歩、▲5六銀(第5図)。

【第5図は▲5六銀まで】

5筋の歩を伸ばし、移動させた歩の場所に銀を上がります。これを、4六に上がってしまっては▲3五歩の仕掛けはありますが、▲3七桂~▲4六歩~▲4五歩と桂を活用した仕掛けができなくなってしまいます。また、6六へ上がるのは8八角の利きを止めてしまうのでこれもよい形とはいえません。以上のことから、5六へ上がるのがよい形となります。

今回は7九の銀を6八~5七~5六と上げましたが、4八の銀を5七~5六と上げて、右銀で位を確保させる指し方もあります。次回のコラムでは、5筋位取りに組む際の注意点と発展形をご紹介いたします。

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