第68期王将戦挑戦者決定リーグ戦、糸谷VS渡辺戦で使われたカニ囲い右四間飛車の組み方発展形【玉の囲い方 第88回】

前回のコラムでは、相居飛車における「カニ囲い右四間飛車」に組む手順を見ていきました。今回はカニ囲い右四間飛車に組む際の注意点を見ていきましょう。それでは、カニ囲い右四間飛車に組むまでの手順をまずは復習していきましょう。初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲4六歩、▲4七銀、▲5六銀、▲4八飛、▲6八銀、▲7八金、▲6九玉、▲5八金、▲3六歩、▲3七桂(第1図)。

【第1図は▲3七桂まで】

左美濃右四間飛車と注意点は一緒

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:第2図をご覧ください。

【第2図は△8五歩まで】

いま、後手が△8五歩と飛車先を伸ばしてきたところです。ここで、▲7七銀と受ける手もなくはないですが、角筋が止まってしまい、ガンガン攻めていくことができなくなってしまいます。以下、▲6六歩~▲6七銀と銀矢倉の堅陣には組めますが、玉を8八まで囲うにはまだまだ手数がかかり、逆に後手から先攻されてしまいそうです。また、▲7七角と上がるのも、△3一角と引かれ、▲3七桂△8六歩▲同歩△同角▲同角△同飛▲8七歩△8二飛(第3図)と進むと、攻めの要である角が盤上から消え、攻撃力が落ちてしまいます。

【第3図は△8二飛まで】

これは左美濃右四間飛車のときと、注意点は一緒ですね。飛車先を受ける場合は、第4図のように、銀が5三、4二の形で後手が陣を敷いてきたときで、これなら角交換しながら飛車先交換をされる心配はありません。

【第4図は▲7七角まで】

先手の陣形がカニ囲いか、左美濃かの違いだけなので、基本的には注意点はほぼ変わりません。それでは、囲いの発展形を見ていきましょう。

カニ囲い右四間飛車の発展形

囲いの発展形:▲7七銀と上がり、▲6六歩~▲7九角~▲6八角~▲7九玉と、矢倉に組むのも場合によっては有力なときもあります。例えば、第4図のように後手が専守防衛の陣を敷いてきたら、8筋は▲7七銀と受け、こちらも堅陣に組んでじっくり指していきます。また、いかにも現代調な組み替え方もあります。第5図は平成30年11月13日、第68期王将戦挑戦者決定リーグ戦、▲糸谷哲郎八段ー△渡辺明棋王戦(肩書は当時)です。

【第5図は▲6七銀上まで】

銀を6七に上がり、雁木のように組んだのは、まさに現代調の指し方ですね。第5図から△6四銀に▲4五歩と突っかけ、△同歩▲同銀△5三銀上と局面が動いていきました。

次回のコラムからは、第二の形を見ていきます。塚田泰明九段が得意とされていた形です。

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