ソフト考案の対振り飛車囲い「エルモ(elmo)囲い」の注意点と発展形とは【玉の囲い方 第64回】

前回のコラムでは、対振り飛車における「エルモ(elmo)囲い」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、エルモ囲いに組むまでの手順の復習です。初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲2五歩、▲5七銀、▲9六歩、▲6八銀上、▲7九金、▲5九金(第1図)。

【第1図は▲5九金まで】

それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点:対振り飛車の囲いでは、ほとんどの場合▲5八金右と右金を5八へ上がりますよね。つい▲6八銀上の前などで、▲5八金右と上がってしまいそうになりますが、エルモ囲いの右金は5九がよい位置なのです。図で見ていただくのがわかりやすいでしょう。第2図をご覧ください。

【第2図】

右金を5八に上がってから、▲7九金と寄った形になります。さて、これではなにがいけないのでしょうか?現状では、特に問題はなさそうにも見えますね。では、ここから戦いが起こり、飛車角交換になったとしましょう。第3図は、△2八飛と打たれた局面です。

【第3図は△2八飛まで】

こうなると、金が5九のほうがよいということがわかりやすいですよね。もし金が5九ならば▲3七桂と逃げたりすることもできますが、第3図では5八の金と2九の桂の両取りが掛かっています。

これならば、7九に金を寄らずに左金は6九のままのほうがよかった、ということになりますね。金が5九ならば、2八ではなく3九に飛車を打たれても、6八の銀が利いていますので、やはり金を逃げたりしなくて大丈夫です。7九の金は8八や8九を守り、6八の銀は玉の脇を固めるとともに、5九の金へヒモを付けています。

エルモ囲いは一見奇異に見えますが、実はとても連結のよい囲いなのです。それでは、次は囲いの発展形を見ていきましょう。

囲いの発展形:エルモ囲いは、まだ指され始めたばかりなので、プロの実戦例も少ないです。基本的には第1図の形から▲3六歩~▲4六銀~▲3五歩や、▲3六歩~▲4六歩~▲4五歩などと、急戦を仕掛けていきます。ですが、持久戦になった対局もあるので、そちらを見ていきましょう。第4図は平成30年10月4日、第27期銀河戦本戦Bブロック、▲大平武洋六段ー△大橋貴洸四段戦です。

【第4図は△2二金上まで】

大橋四段はエルモ囲いに組んだ後、△3三角と上がり、△4一金右とさらに右金を寄せていきました。大平六段が▲5七金~▲3六歩と角頭を狙った手に対し、△4四歩~△4三銀と銀を上がって補強しました。さらに△2二玉~△3二金右と囲いを安定させてから、△1二香~△1一玉~△2二金上と穴熊に潜りました。

通常の穴熊よりは銀が4三に離れているぶん強度は劣りますが、それでも2二と3二に金が二枚並んだ形は堅固ですね。また、第5図をご覧ください。

【第5図は▲5九金まで】

平成30年7月12日、第3回上州YAMADAチャレンジ杯、▲大橋貴洸ー△渡辺正和五段戦です。これまでは▲5七銀と上がる形を見てきましたが、右銀を5六に上がり、右四間飛車の形になっています。右四間飛車との相性もなかなかよく、これからプロの実戦例も増えていきそうです。

新しい囲いですので、自分なりに構想を考えながら指すのももちろん楽しいですが、プロの実戦例もどう変化していくのか?それも見ていくというのも、かなり楽しめると思いますよ。

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