挑戦者変更も、福間が防衛 ~女流王位戦振り返り~

 第36期女流王位戦五番勝負は異例の事態に。本来は福間香奈女流王位に西山朋佳女流二冠が挑戦する予定だったが、西山が開幕直前に体調不良により辞退。規定により、挑戦者決定戦で敗れた伊藤沙恵女流四段が挑戦者に繰り上がることとなった。

第36期女流王位戦五番勝負第1局

 第1局は兵庫県姫路市「里湯ひととき夢乃井」にて。直前の対局者変更により、お互いに準備は不十分なままでの出た所勝負だ。福間の向かい飛車に伊藤は銀冠に構える。仕掛けで玉形差を生かし、伊藤がリードを奪った。

【第1図は△4四角まで】

 先手は駒損ながら、8三の垂れ歩が大きなポイントになっている。▲3二銀が大駒を奪いにいく好手。△6一飛に▲4三銀成△2六銀▲4四成銀△2七銀成と大駒を取り合ったが、打った銀の働きが歴然の差だ。▲5三成銀△5七角成▲4四角と自然に攻め合い、先手が順調にリードを拡大している。以下も押し切って、伊藤が開幕戦を制した。


写真:虹

第36期女流王位戦五番勝負第2局

 第2局は北海道札幌市「京王プラザホテル札幌」にて。福間の先手中飛車に、誘いに乗る形で伊藤が横歩を取って力戦となった。先手ペースの戦いだったが、伊藤も肉薄して際どい終盤戦に持ち込む。

【第2図は△3二同玉まで】

 △4九飛成の狙いがあり、単に受けるのは△3六とで後手玉が捕まえにくくなる。▲4三銀が強烈な放り込み。△同飛なら▲4四銀と押さえれば良い。△4三同玉は仕方ないが、▲4四銀△4二玉と上部を押さえてから▲5九金と受けに回った。これなら3六の桂を取られても問題ない。△3二銀と粘ったものの、▲5四歩が絶好の突き出しで、後手は受け切れる形ではない。以下手数は掛かったものの、福間が押し切って1勝1敗に。


写真:紋蛇

第36期女流王位戦五番勝負第3局

 第3局は福岡県飯塚市「麻生大浦荘」にて。福間の向かい飛車に、伊藤は居飛車穴熊に構える。難しい戦いだったが、端に手を付けられて先手が神経を使う展開になった。

【第3図は▲8二角まで】

 先手も必死の手作りだが、△7三銀上が落ち着いた対応。▲9一角成に△7五香で後手玉が見えなくなった。▲6六歩△7七歩成▲6五歩と迫るものの、△8七とが厳しく、後手勝勢だ。福間が勝って2勝目を得た。


写真:潤

第36期女流王位戦五番勝負第4局

 第4局は徳島県松茂町「樫野倶楽部樫野邸」にて。第2局同様の形から先手ペースになるが、伊藤がうまくアヤを付けて混戦に持ち込んだ。

【第4図は▲7五金まで】

 △5六歩▲7四金に△5五角が絶好打。▲4六歩に△7四歩で8二に利かして王手角取りを防いでいる。技さえ掛からなければ金駒一枚の得が大きい。以下は落ち着いた指し手で後手が逃げ切った。2勝2敗となり、決着は第5局へ。


写真:夏芽

第36期女流王位戦五番勝負第5局

 第5局は東京都渋谷区「将棋会館」にて。相振り飛車模様の出だしから福間が居飛車に戻す展開。伊藤が端で動いて戦いが始まる。

【第5図は△4八角成まで】

 この直前までは難解な戦いが続いていたが、先手が抜け出すチャンスを迎えた。▲6四歩が痛打。△同金は▲4二角がある。△7三金とかわしたがこの歩が入ったのは大きく、▲5六竜△5五歩▲4五竜△5四銀打▲4六竜と穏やかに指して、着実に先手がリードを広げた。以下手数は掛かったものの、福間が押し切っている。


写真:紋蛇

 福間はこれで7連覇、通算11期目の女流王位獲得。急遽の挑戦者となった伊藤はフルセットに持ち込んで五番勝負を盛り上げたが、惜しくも獲得はならなかった。

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