「宮田一門」VS「関西三銃士」 ABEMAトーナメント2025~予選Aリーグ第二試合振り返り~

 6月14日(土)に放映された予選Aリーグ第2試合、チーム伊藤「宮田一門」(伊藤匠叡王、斎藤明日斗六段、本田奎六段)対チーム豊島「関西三銃士」(豊島将之九段、糸谷哲郎八段、大石直嗣七段)戦の模様をお伝えする。関西三銃士は今回の参加チームで唯一、前回とメンバーが全く変わっていないチームだ。
 振り駒の結果、開幕の第1局はチーム豊島の先手番に。対戦カードは▲糸谷―△本田戦で、角換わりの将棋となる。中盤でうまく攻めの形を構築した糸谷がリードを奪っての快勝となった。続く第2局は大石―斎藤戦で、矢倉対雁木の戦いとなったが、大石が終盤で切れ味鋭い寄せを見せて勝利、チーム豊島が2連勝とする。だが、リーダー対決となった第3局では伊藤が踏ん張ってチームに初勝利をもたらした。
 第4局は再びの糸谷本田戦に。手番を入れ替えての戦いは糸谷の一手損角換わりとなった。終盤の入り口で先手の本田が優位を築くも、糸谷の頑張りもあって長い将棋に。先手はまず入玉を実現して自玉の安全を確保する展開となる。

【第4局 糸谷哲郎八段-本田奎六段】

【第1図は△3三同飛まで】

 第1図は200手目の局面。先手の入玉は事実上確定しており、駒数勝負でも勝てそうだ。だが本田は▲2七飛△3七成香▲2五桂と寄せに行く。以下△2四玉▲3三桂成△2七成香に▲5三歩成が好手だ。6三の角の利きが通り、△3三銀に▲3六銀が馬取りかつ後手玉の抑えとなり、ピッタリである。

 連敗後の連勝でいい流れを作ったチーム伊藤は、その流れを引き継いで残る1人にも勝ってもらおうと、第5局で斎藤を出陣させる。チーム豊島は流れを引き戻す役を大石に託した。前局に続いて同一カードの再戦となった第5局は、斎藤が横歩取りの乱戦を制して勝利。

【第6局 糸谷哲郎八段-斎藤明日斗六段】

【第2図は△4四歩まで】

 こうなると第6局でも同一カードの再戦かとも思われたが、チーム伊藤はリーダーが斎藤に連闘を打診し、斎藤が快諾。チーム豊島もリーダーが「同じカードばかりでは」と糸谷に悪い流れを断ち切ってもらおうと委ねた。戦型は矢倉模様対雁木模様の持久戦に。第2図はその終盤。解説の佐藤紳哉七段は先手ペースを見ていたが、先手の斎藤は残り時間がない。実戦は▲2二金△4三銀▲3三銀成△同桂▲3四歩△4一桂▲2三金引△2一桂▲3三歩成△同桂右と進んで、後手の受け切模様となった。第2図では▲4五歩と合わせれば、△同歩には▲3三金△同桂▲2四金、△4五同桂には▲4四角で先手に分がある将棋となった。

 第6局を終えて3勝3敗の五分に。ともにリーダーが2回の出番を残していることも共通している。こうなると第7局はリーダー同士の再戦となるのが必然だ。手番も第3局と同様である。ただ戦型は角交換拒否の第3局と異なり、角換わりの戦いとなった。ここは豊島が意地を見せて勝利。これで両チームともにチーム全員が勝ち星を上げたことになった。
 チーム豊島が勝ち越しまであと1勝としたが、第8局では本田が大石を下してタイに持ち込む。3度目のリーダー対決となった最終第9局に全てが委ねられた。
 振り駒の結果、伊藤の先手に。戦型は相掛かりとなった。徐々に先手陣を押さえつけ、突破を果たした豊島がリードを奪う。そうして迎えた第3図がクライマックスだ。

【第9局 伊藤匠叡王-豊島将之九段】

【第3図は▲6五角まで】

 ここで後手は△6七とや△7八竜で勝てればいいが、王手が途切れた瞬間に飛んでくる▲4四桂の筋が相当に怖い。実際は△6七となら後手に分があったようだが、豊島は△6四歩と玉の退路を広げつつ、先手の角に働きかけた。ただこの手自体は先手玉に働きかけるものではないので、今度は伊藤に攻めの手番が回ってくる。▲4四桂△同歩に▲3二角成と下駄を預けられるかどうか。▲3二角成の局面は後手玉の受けが難しくなっているが、この瞬間の先手玉が大丈夫かどうか。自陣に利いていた角もいなくなっているので、かなり危ない。
 果たして、伊藤は▲4四桂△同歩に▲4三銀△同金▲同角成△同玉▲2三飛成と王手の連続で迫ったが、△3三銀と受けられてわずかに届かない。△4四同歩には▲3二角成なら結論としては先手玉が詰まず、先手が有望だった。リーダー対決の最終決戦を制したチーム豊島が5勝4敗で勝利した。続いて6月21日に放映される予選Bリーグ第一試合、チーム藤井対チーム天彦の対戦もどうぞお楽しみに。

【総合成績】
第1局 糸谷○-●本田(第1局はチーム豊島が先手番。以下は第8局まで交互、第9局はチーム伊藤の先手番)
第2局 大石○-●斎藤
第3局 豊島●-○伊藤
第4局 糸谷●-○本田
第5局 大石●-○斎藤
第6局 糸谷○-●斎藤
第7局 豊島○-●伊藤
第8局 大石●-○本田
第9局 豊島○-●伊藤
総合5勝 ― 4勝

【個人成績】
豊島九段 2-1
糸谷八段 2-1
大石七段 1-2
伊藤叡王 1-2
斎藤六段 1-2
本田六段 2-1

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