自由度が高く、さまざまな指し方ができるのが魅力。後手番で使える「カニカニ金」とは?

前回のコラムでは、「カニカニ銀」をご紹介しました。今回は「カニカニ金」をご紹介します。え? 銀のときのように、左右の金を4六と6六へ繰り出していくの? 玉の守りは? と、前回のコラムをお読みいただいた方には思われるでしょう。頭にクエスチョンマークがいっぱい浮かばれているとは思いますが、どんなものかを見ていきましょう。

囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は▲6六歩まで】

平成15年6月19日、第16期竜王戦昇級決定戦6組、▲中田章道六段ー△児玉孝一七段戦(肩書は当時)です。え?なんの変哲もない相矢倉の序盤戦じゃない。もしかしてここから5二の金と3二の金を繰り出していくの? と思われるでしょうが、半分は正解です。

第1図から、児玉八段は△5三金! と右金を繰り出していきます。▲2六歩に△5五歩▲同歩△4四金! ▲6七金右△5五金▲2五歩△6四歩▲5六歩△5四金▲5七銀△6三銀(第2図)と進みました。

【第2図は△6三銀まで】

さすがに繰り出していくのは5二の金だけで、3二の金は玉の大切な守り駒となります。右金が守りから外れて薄くなりましたが、5四の金が威張っている形で攻撃陣には厚みが加わっていますよね。

カニカニ銀と同じく、創始者は児玉八段です。最初のうちはなかなか勝ち星に恵まれませんでしたが、試行錯誤を重ね、白星も増えていきました。カニカニ銀は先手番で使っていましたが、カニカニ金は後手番で使用していました。

次に第3図をご覧ください。

【第3図は△5四金まで】

平成10年1月23日、第56期順位戦B級2組、▲淡路仁茂九段ー△児玉孝一七段戦(肩書は当時)です。右銀を6三に上がるのではなく、5一に引きつけ、飛車を中央に構えました。こうすることにより、玉の守りが金銀三枚となって、薄さをカバーできるようになります。また、金を中央ではなく、△6四金~△7五歩▲同歩△同金と進めた実戦もあり、さまざまなバリエーションがあります。ナナメ棒銀ならぬ、ナナメ棒金ですね。自由度が高く、さまざまな指し方ができるところが魅力です。

それでは、いつも通り先手側の駒だけを配置して(実際は後手番ですが、対ヒネリ飛車の囲いのときと同様に、見やすいよう先手側の配置で進行させていきます)、囲いに組むまでの手順を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順:初手から▲2六歩、▲7六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八銀、▲7八金、▲6九玉、▲5八金(第4図)。

【第4図は▲5八金まで】

ここまでは矢倉を組むときと、変わらない手順になります。第4図から、▲5七金、▲5五歩(△同歩)、▲4六金、▲5五金、(△5四歩)▲5六金(第5図)。

【第5図は▲5六金まで】

やや中途半端な感がありますが、ここから右銀の動き方が5九と4七に分かれたりするので、ひとまず金を5四に配置した形を区切りとしておきます。次回は組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

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