攻めの理想は"飛車角銀銀桂"。升田幸三賞を受賞し、児玉VS石田戦でも使われた「カニカニ銀」とは?

今回のコラムでは「カニカニ銀」をご紹介します。カニカニ銀? カニ囲いは玉をカニのようにひとつヨコ歩きしたから、カニのようにヨコ歩きするの? などと、名前を聞いてもクエスチョンマークが頭に浮かぶ方も多いと思います。聞きなれない名称だとは思いますが、平成15年度第30回将棋大賞では、升田幸三賞を受賞した戦法でもあります。では、どんな囲いなのかを見ていきましょう。

囲いの特徴:第1図をご覧ください。

【第1図は▲7七桂まで】

昭和63年4月18日、第1期竜王戦残留決定戦2組、▲児玉孝一六段ー△石田和雄八段戦(肩書は当時)です。先手陣は異様な形をしていますよね。これがカニカニ銀です。二枚の銀がカニの爪のような形に見えませんか?  ここから、この二枚の銀がカニの力強く、そして鋭い爪のように後手陣に襲い掛かります。第1図から、△1四歩▲5五歩△同歩▲6五桂△6四銀▲2四歩△同歩▲5五銀右(第2図)と進みました。

【第2図は▲5五銀右まで】

第2図以下も、児玉八段はガンガン攻めまくり、後手を圧倒しました。格言で「攻めの理想は飛車角銀桂」とありますが、それをさらに上をいく「飛車角銀銀桂」で中央から攻めています。

また、「居玉は避けよ」という格言もありますが、二枚の銀を攻めに繰り出していますので、玉を左右どちらに囲っても堅くなりません。ですが、居玉のままなら二枚に金がピタっと玉に張り付いており、妙に安定感があります。8筋は角がいて7八に上がる必要がないので、玉から金が離れずにすみます。初形をそのまま囲いとして使うというところも斬新ですよね。

それでは、いつも通り先手側の駒だけを配置して、囲いに組むまでの手順を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順:初手から、▲7六歩、▲6八銀、▲7七銀、▲5六歩、▲4八銀、▲2六歩、▲2五歩(第3図)。

【第3図は▲2五歩まで】

▲7七銀と矢倉模様に銀を上がった後、すぐに2筋を伸ばしていきます。これは後手の銀を3三に上がらせるためです。第3図から、▲5七銀、▲4六銀、▲9六歩、▲9七角、▲5八飛(第4図)。

【第4図は▲5八飛まで】

右銀を4六へ繰り出し、飛車、角を中央に利かせていきます。この時点でも、すでに破壊力がすごそうな形ですよね。第4図から、▲6六銀、▲7七桂(第5図)。

【第5図は▲7七桂まで】

二つ目のハサミである左銀、そして左桂も繰り出して、完成形となります。次回は組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

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