第9期竜王戦第4局、羽生VS谷川戦でも使われた対ヒネリ飛車「カタ囲い」の組み方

今回のコラムも、ヒネリ飛車に対する囲いをご紹介します。「カタ囲い」と呼ばれるものです。聞き慣れない名称だと思いますが、見てみると、あ! これか! となるはずです。ではどんな囲いなのか見ていきましょう。囲いの特徴:第1図をご覧ください。

「カタ囲い」名称の由来は‥

【第1図は△2二玉まで】

平成8年11月19、20日、第9期竜王戦七番勝負第4局、▲羽生善治竜王ー△谷川浩司九段戦(肩書は当時)です。対ヒネリ飛車ではいちばん見慣れた形ではないでしょうか? 将棋世界平成13年2月号付録、玉の囲いアラカルトでこの形は「カタ囲い」と紹介されています。
カタ囲いが出るまで、ヒネリ飛車に対してはこれまでご紹介してきた、「4三金型舟囲い」や「タコ金」などが主流でしたが、玉が薄くて勝率は悪く、「先手の必勝法があるとしたらヒネリ飛車」とまで言われるほどでした。ところが、このカタ囲いが用いられてからは後手の勝率が上がり、しだいにヒネリ飛車は減少していくこととなりました。
さて、なぜこのような呼び方になったのかといいますと、「玉が堅いから」だそうです。第1図からは、▲5六歩△4五歩▲5七銀△5四銀▲6八金△6三金(第2図)と進行しました。

【第2図は△6三金まで】

後手は堅陣で、角筋も通り、とても伸び伸びとしていますね。違いがわかりやすいように、4三金型舟囲いと見比べてみましょうか。第3図をご覧ください。

【第3図は▲5七銀まで】

昭和58年4月26、27日、第41期名人戦七番勝負第2局、▲谷川浩司八段ー△加藤一二三名人戦(肩書は当時)です。第1図や第2図と、第3図を見比べてみると玉の堅さは一目瞭然でしょう。第3図の形では、激しい戦いになると玉が薄く、すぐにやられてしまうことも多々ありますが、第2図の形では先手に堅さ負けしておらず、大駒の交換なども歓迎という形です。
それでは、いつも通り先手側の駒だけを配置して(今回も実際は後手番ですが、見やすいように先手側の配置で進行させていきます)、囲いに組むまでの手順を見ていきましょう。

「カタ囲い」の組み方

囲いを組むまでの手順:初手から、▲2六歩、▲2五歩、▲7八金、(△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩)▲3八銀、▲9六歩、▲4六歩、▲6九玉、▲6八銀(第4図)。

【第4図は▲6八銀まで】

4三金型舟囲いやタコ金では、角筋を比較的早く開けましたが、カタ囲いの場合は後回しにします。その理由はまた次回に。第4図から、▲4七銀、▲7九玉、▲7六歩、▲7七角、▲8八玉(第5図)。

【第5図は▲8八玉まで】

【第5図は▲4七銀まで】

第5図をひとまず完成形としておきます。次回はカタ囲いに組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

おすすめの記事

棋士・棋戦

2024.01.16

里見、2年連続の挑戦を跳ね返す