前回のコラムでは、「対ヒネリ飛車矢倉」の組み方を見ていきました。今回は組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、まずは囲いの組むまでの手順の復習です。初手から、▲2六歩、▲2五歩、▲7八金、(△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩)▲4八銀、▲9六歩、▲5六歩、▲6八銀、▲7六歩、(△7四飛)▲7七銀、▲6九玉、▲7九角、▲6八角、▲7九玉、▲8八玉(第1図)。
【第1図は▲8八玉まで】
それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:前回、組むまでの手順中に、銀は4八に上がると書きました。なぜ3八ではいけないのでしょうか? そちらを見ていきましょう。第2図をご覧ください。
【第2図は△3三銀まで】
いま▲3六飛に対して、△3三銀と受けたところです。なにやら後手は中央が薄い感じがしませんか? そうですね。▲7四歩と突けば△同歩なら▲5三角成と成り込むことができます。また、△3一角と受けても、▲5六飛△5二金▲6五桂(第3図)とガンガン攻められてしまいますね。
【第3図は▲6五桂まで】
先手からは▲8六飛のぶつけもあり、これは後手が受けきるのは大変な局面となっています。7二ではなく、△6二銀と上がっていればこのような変化はありませんでした。これが前回4八に銀を上がった(先後逆で手順を見ていったので、実際は6二)理由です。
それでは、次に囲いの発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形:第4図は平成9年8月22日、第56期順位戦B級1組、▲内藤國雄九段ー△中村修八段戦(肩書は当時)です。
【第4図は△4四銀右まで】
前回のコラムでご紹介した将棋ですが、中村九段は4筋~3筋~2筋と次々と位を取っていきました。ここまで進むと、玉頭の位が非常に大きいですよね。この後、中村九段が△3六歩▲同歩△3五歩▲同歩△同銀と継ぎ歩で銀を進出させたのち、△2六歩と伸ばして玉頭から寄せきりました。
次に第5図をご覧ください。昭和62年12月18日、第52期棋聖戦一次予選、▲土佐浩司五段ー△伊藤果六段戦(肩書は当時)です。
【第5図は▲2七歩まで】
中村九段は右銀を4四に進出させましたが、伊藤八段は銀は6二のままで金を4三に上がり、△3五歩~△3四銀と玉頭位取りの形に組んでいきました。第4図の形では、▲7四歩に△6二金と中村九段は辛抱(△同歩は▲同飛△7三歩に▲8四飛からの飛車交換で先手よし)しましたが、第5図の形ならば、▲7四歩には△同歩▲同飛△7三銀▲7六飛△7五歩と手に乗って銀を進出することができます。
第5図は△2五歩に▲2七歩と打ったことろですが、こう打たせられればヒネリ飛車の利点である、持ち歩を生かして攻めるということができなくなりますし、2筋交換にかけた手を無駄にさせることができますね。
ヒネリ飛車に対しての矢倉はいかがでしたか? 指しこなすのは難しいですが、ヒネリ飛車に悩まされている方は一度試されてみるのもおもしろいと思いますよ。相手はびっくりするはずですから。