第60期王位戦予選 藤森VS佐々木戦、第12回朝日杯準決勝 渡辺VS千田戦でも採用された近代雁木の組み方の発展形

前回のコラムでは「ツノ銀型雁木」の組み方を見ていきました。今回はツノ銀型雁木の組む際の注意点と発展形を見ていきます。それでは、まずは囲いに組むまでの手順を復習しましょう。初手から、▲7六歩、▲6六歩、▲6八銀、▲6七銀、▲7八金、▲2六歩、▲2五歩、▲6九玉、▲4八銀、▲5六歩、▲5八金、▲3六歩、▲4六歩、▲4七銀、▲3七桂(第1図)。

【第1図は▲3七桂まで】

4六歩は早く突きすぎないことが大切

それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点:第2図をご覧ください。

【第2図は△7五歩まで】

後手が棒銀から急戦を仕掛けてきたところですが、いかにも先手陣が立ち遅れていますね。第2図から、▲7五同歩は△同銀で次に△8六歩がありますし、▲6五歩と角をさばこうとしても、あっさり△7七角成と交換され、▲同金は△8八角、▲同桂は△7六歩▲同銀△7五歩▲6七銀△7二飛で、△7六歩が受からない形となっていずれも先手不利になってしまいます。
では、なにが悪かったのでしょうか? 急戦を仕掛けられてまずいのでしょうか? 原因は4六に突いた歩にあります。第3図をご覧ください。

【第3図は△7五歩まで】

先手の▲4六歩、▲9六歩の二手が▲5六歩、▲6八角に代えた局面です。第3図でも、▲7五同歩は△同銀▲7六歩△8六歩でやっぱり先手悪いじゃん、と思われる前に、先手の反撃策を考えて見てください。そうです、▲4六角と飛車取りに出れば、△7三銀は▲7五歩で歩がタダな上に、▲7四歩の突き出しが残ります。△9二飛とかわす手には、▲5七銀と上がっておけば角のにらみも強く、後手は攻め続けることが困難になります。

このように、4六へ角を出る手を残しておくために、▲4六歩はあまり早く突きすぎないことが大切になります。では、次に囲いの発展形を見ていきます。

さまざまな指し方がある、今後も注目の戦型

囲いの発展形:第4図をご覧ください。

【第4図は▲4六銀まで】

平成30年10月17日、第60期王位戦予選、▲藤森哲也五段ー△佐々木勇気六段(肩書は当時)です。相雁木の将棋で、藤森五段が右銀を4七ではなく、3七~4六と繰り出してきたところです。ここで△5四歩と突き、△6四角の反撃を見せる手も考えられますが、佐々木七段は力強く受けていきます。
第4図から、△3三金! ▲3五歩△3二玉と進めました。一見、ひどい悪形に見えますが、3三の金が2三にも利いており、なかなか守備力が高い形と、最近評価が変わってきました。先手の4六の銀もこれ以上進出させることが難しいですね。

第5図は平成31年2月16日、第12回朝日杯将棋オープン戦準決勝、▲渡辺明棋王ー△千田翔太六段戦(肩書は当時)です。

【第5図は▲4七銀まで】

ここから千田七段は、△7二金! ▲3七桂△8一飛▲1六歩△9四歩▲9六歩△6一玉! ▲6八玉△8三金! ▲5六銀右△7二玉と右玉に組みました。このように、少し前までは考えられなかった形がどんどん出てくるようになりました。右銀の位置も、4七だけでなく、4六や5六に繰り出す形もあり、さまざまな指し方があるので、今後も注目の戦型ですね。

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