大技は慎重に。矢倉における4六銀、3七桂型の攻め方とは【第84回 矢倉の崩し方】

今回のコラムも、矢倉で1筋の端歩を突き合っている形で4六銀、3七桂型から攻めていく指し方を解説していきます。それでは第1図です。

【第1図は△6四角まで】

いま3五の地点で銀交換が行われた後に、△6四角と4二にいた角を出てきたところです。前回のコラムでは、ここで▲4六角とぶつけましたが、うまくいきませんでした。最後に二つ攻め方があると書きましたが、考えていただけましたでしょうか? それでは見ていきたいと思います。

まずは、元気よくいきましょう。第1図から、▲1五香と当たりになっている香を捨てていきます。対して、△3七歩や△3七銀は▲1八飛と回る手がピッタリで、△1五香▲同飛は後手の端の数が足りず、あっさりよくなります。また、▲1八飛では、▲1一香成△3八歩成▲2一成香△同玉▲3三歩や、▲1二歩△3八歩成▲1一歩成と飛車を捨てても攻めきれます。

よって、後手は△1五同香と取る一手です。ここで、派手な手が見えた方もいるでしょう。一気に決まるか確認してみましょう。▲1三桂成! と成り込み、△同桂▲同角成△同玉▲3二飛成で先手必勝! と読んで一気に勝ち、と思われた方もいるでしょう。ですが、本当にそうでしょうか? 後手の応手は必然ですか? ▲1三桂成のとき、△3一玉とかわされるとどうでしょう? それには▲2三成桂△同金に▲1三角成! の大技が決まるよ。と、逃げられる手もしっかり読まれているかもしれませんが、惜しいです。▲2三成桂のときに△3四香(第2図)と、金取りに構わず田楽刺しに香を打たれる手があります。

【第2図は△3四香まで】

第2図では、▲3二成桂と金ははがせますが、△同玉の局面は相変わらず田楽刺しが残っており、どうも攻めきれません。大技が見えるとつい指してしまいがちですが、相手の受けもしっかり読まないとなかなかうまくいきません。第1図から、▲1五香△同香のときには、▲3三歩(第3図)が正しい攻め方です。

【第3図は▲3三歩まで】

取る手、逃げる手がありますが、まずあっさり終わるのが△3三同桂です。▲1三角成△2一玉▲1二銀までですね。次に△4二金寄を見てみましょう。これには、▲3二銀と打ち込んでしまうのがよいでしょう。△3二同金には、今度こそ大技が決まります。▲1三角成! とすれば、今度は△同桂に(△1一玉とすれば打ち歩詰めですが、▲3二歩成で必至です)▲3二歩成△1二玉▲2二金までです。▲3二銀に△5三金寄は、▲2一銀成△同玉▲1三角成(第4図)で、次の▲3四桂が厳しく、後手は受けきれません。

【第4図は▲1三角成まで】

第3図で、△3一金にも▲3二銀の打ち込みが厳しく、これも攻めきれます。よって、後手は3三の歩を金で取るしかありません。△3三同金寄▲同桂成△同金に、▲4六角とぶつければ、△同角▲同歩(第5図)と進み、今度△4七角には▲3七飛と当て返して、△3六銀には▲4七飛△同銀成▲5三角、△2九角成には▲3四歩が厳しく、いずれも先手よしです。

【第5図は▲4六同歩まで】

今度は手番を渡しても、後手陣を薄くしていますので、角を持つ手が大きいのです。第5図から△3四歩と受けても、▲5三角と打ったり、▲3五歩と合わせて△同歩▲同飛と1五の香を狙ったりと、さまざまな攻め方があります。

次回のコラムでは、もうひとつの攻め方を見ていきましょう。

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