銀打ちは早まらないで。矢倉における4六銀、3七桂型の攻め方とは【第80回 矢倉の崩し方】

今回のコラムも、矢倉で1筋の端歩を突き合っている形で4六銀、3七桂型から攻めていく指し方を解説していきます。それでは第1図です。

【第1図は▲2五銀まで】

いま、先手が▲2五銀と打ったところです。前回のコラムでは、ここから△1七歩成▲3五銀と進め、△2七とに▲1一香成が好手で、△3八と▲2一成香△同玉▲3四香で先手がやれる、ということになりました。

じゃあ第1図はもういいじゃん。と、いうことになりそうですが、冷静に局面を見てください。後手は、端を逆襲するために銀桂交換に甘んじましたが、第1図は△1七歩成の一手ですか? ▲3五銀と出られると、3四の地点が数が足りなくなりますが、それを防ぐ手はありませんか?

ただし、現状では3五の歩を守る手はありません。ですので、3五に銀を出られても、△3四歩で追い返せるようにすればよいのです。よって、後手にとっては2五に打たれた銀がジャマなのですね。そこで、△2四歩(第2図)と銀取りに突き出してきます。

【第2図は△2四歩まで】

第2図から▲3五銀は、△2五歩▲3四歩△3二金(第3図)と大きな拠点は作れますが、後続の攻めがなく、銀桂交換の駒得から桂損になってしまって、先手不利になります。

【第3図は△3二金まで】

では、第2図から▲2四同銀△同金と銀を捨て、▲3五銀とぶつけていくのはどうでしょう? 先手の勢いはとてもよいですが、平凡に△3五同金▲同角△3四歩(第4図)と受けられると、角取りの後手を引いてしまいます。

【第4図は△3四歩まで】

これもうまくいきません。よって、第2図から先手は強引に攻めていくことは難しいようです。そこで、▲1六銀と歩を払いながら銀を引きます。ここで後手は二通り手段があります。

まずは、あいた空間に△2三桂と打つ手です。受け一方の手ですが、△1六香▲同香△1五歩とする手や、△4五歩(▲同銀は△4四歩で銀が死ぬ)をみて先手の攻めを受け止めています。

また、強く指すなら△1六同香▲同香△2七銀(第5図)と飛車香両取りをかけていきます。

【第5図は△2七銀まで】

第5図から、▲3五飛に△1六銀成とされると、成銀も上部に厚い駒になってきそうで、先手からはこれ以上の攻めがなく、失敗します。第5図は部分図ですので、▲3五飛△1六銀成に▲8五飛と回れますが、実戦では9~6筋にも後手の駒がいます。よって、3五に出た飛車のうまい使い道がなく、4六の銀も残っているので先手失敗となります。

また、手堅く後手が指すのなら、第5図からの▲3五飛に対し、すぐに△3四歩と打つ手もあります。▲1五飛と香にヒモをつけながら回られてしまいそうですが、△1三歩と受けておけば、次に△2三桂と打つ手が残って、これも先手失敗ですね。

よって、第1図から△1七歩成は▲3五銀で先手がよくなりますが、△2四歩と突かれるとどうもうまくいきません。次回のコラムでは、第1図の▲2五銀に代わる手はあるのかを見ていきましょう。

おすすめの記事

棋士・棋戦

2024.01.16

里見、2年連続の挑戦を跳ね返す