右玉の反対?相振り飛車の囲い「左玉」の特徴とは【玉の囲い方 第59回】

今回のコラムでは、「左玉」をご紹介します。その名の通り、左側に玉を囲うものですが、相居飛車や対振り飛車では攻撃の要である、飛車と反対側の左に行くのは当たり前ですね。飛車がいるところから戦いを仕掛けていきますから。

では、左玉とはなんぞや? となりますが、これは相振り飛車の囲いです。相振り飛車では、飛車を左側に振るので、通常は以前のコラムでもご紹介した通り、右側に美濃・穴熊・金無双・矢倉のいずれかに囲うことがほとんどです。しかし、今回ご紹介する左玉は、飛車がいる左側に囲います。それでは、どのように囲っていくのかを見ていきましょう。

囲いの特徴

第1図をご覧ください。

【第1図は▲7八玉まで】

平成30年6月27日、第90期棋聖戦1次予選、▲高田尚平七段ー△上野裕和五段戦です。向かい飛車対三間飛車の相振り飛車の戦型ですが、後手の上野五段は相振り飛車特有の金が二枚並んだ穴熊に囲っています。先手の高田七段の陣形は、見慣れない形ですね。これが左玉です。向かい飛車に振り、▲6八玉~▲7八玉と左側に囲いました。

陣形の堅さは、見ての通り圧倒的に後手がまさりますが、そのぶんバランスがよい形です。先手陣は飛車交換には弱い形ですが、角交換になれば駒が偏っている後手陣に隙が多いです。6六の銀は位を確保しており、重要な守り駒ですが、場合によっては▲7五銀から敵陣へ向かわせることもできます。

実戦はここから、△7四歩▲8四歩△同歩▲同飛△8三歩▲8九飛△6四歩▲同歩△同銀▲6五歩△7三銀引▲3六歩(第2図)と進み、高田七段が角交換を狙って3筋を突き出して、本格的な戦いが始まりました。

【第2図は▲3六歩まで】

ほかにも、角を6六、右銀が5七という形や、左銀が7六、左金が6七という形もありますが、まずは第1図の形への組み方を見ていきましょう。それでは、いつも通り先手の駒のみを配置して見ていきます。

囲いを組むまでの手順

▲7六歩、▲6六歩、▲7八銀、▲6七銀、▲7七角、▲8八飛(第3図)。

【第3図は▲8八飛まで】

ここまでは相振り飛車の美濃や金無双などと同じ手順ですね。ここから、左玉特有の手順になっていきます。第3図から、▲4八銀、▲5六歩、▲5七銀、▲6五歩、▲3八金、▲5八金(第4図)。

【第4図は▲5八金まで】

6筋の位を取れない場合もあるので、この手順は絶対ではないのですが、ここからいよいよ玉を移動させていきます。第4図から、▲8六歩、▲8五歩、▲6六銀右、▲6八角、▲7七桂、▲8九飛、▲6九玉、▲7八玉(第5図)。

【第5図は▲7八玉まで】

8筋を伸ばさずに、玉の移動を急ぐのももちろんあります。今回の手順では、単に▲8九飛と引いていますが、▲8四歩△同歩▲同飛△8三歩▲8九飛と8筋を交換できる場合はしたほうがもちろんよいです。飛車先が相手陣に直通し、▲8五桂と攻める順も生じますから。次回のコラムでは、組む際の注意点とさまざまな形をご紹介いたします。

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