「串カツ」に似た囲いを知ってますか?羽生VS久保のタイトル戦でも採用された「串カツ囲い」をご紹介【玉の囲い方 第51回】

今回のコラムでは「串カツ囲い」をご紹介します。はて? 串カツの囲いとは? そう思われる方も多々おられるでしょう。ではどのような囲いなのか? そちらを見ていきましょう。

囲いの特徴

第1図をご覧ください。

【第1図は▲7九金寄まで】

平成13年10月5日、第49期王座戦五番勝負第3局、▲羽生善治王座ー△久保利明七段戦(肩書は当時)です。あれ? これ居飛車穴熊じゃん。ずいぶん前のコラムで読んだよ。そう思われた方、よく図を見てください。本当に穴熊ですか? わかりやすいように、居飛車穴熊の図も見てみましょうか。第2図が居飛車穴熊の四枚穴熊です。

【第2図は▲7八金右まで】

先手の陣形をよく見比べてください。どこが違うかわかりましたか? そうです。玉と香の位置が違いますよね。香の上に玉が乗り、串刺しのような形になり、金銀の衣で固められている串カツのようにも見えませんか? 

居飛車穴熊では8八に玉を寄った後、▲9八香~▲9九玉~▲8八銀と三手かかってやっと安心できる形になりますよね。串カツ囲いでは、8八から▲9八玉と、一手で相手の角筋から玉を避けることができます。これが大きな特徴です。

この囲いも、前回までのコラムでご紹介したものと同じく、藤井システムから角筋を絡めた攻めに対抗するために指され始めました。香と玉の位置は違いますが、金銀四枚で固められる、非常に堅固な囲いです。それでは、囲いを組むまでの手順を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順

初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲6八玉、▲7八玉、▲5六歩(第3図)。

【第3図は▲5六歩まで】

串カツ囲いも、居飛車穴熊のように右金は5八へ上がらずに進めていくほうがよいです。なぜかは第3図からの手順でわかります。居飛車穴熊では、第3図から▲7七角~▲8八玉とすぐに囲いに向っていきますが、串カツ囲いでは少し工夫をして進めていくことが多いです。第3図から▲2五歩、▲7七角、▲6八角、▲5七銀、▲6六銀、▲8八玉、▲9八玉(第4図)。

【第4図は▲9八玉まで】

飛車先を決めて角を6八に引き、銀を6六へ持っていきます。なぜ銀より角を先に動かすのかは、次回のコラムで説明します。また、角を6八へ持っていくので、右金が5八に上がっていると6八に寄せることができませんよね。これが右金を5八に上がらなかった理由です。第4図からは、金銀の衣をひたすらくっつけていきます。第4図から▲8八銀、▲7九金、▲5九金、▲6九金右、▲7八金右(第5図)。

【第5図は▲7八金右まで】

第1図と違って銀は7七へ引いてはいない形ですが、ひとまずこれでも十分に堅固な囲いですので、完成とします。次回のコラムでは、囲いに組む際の注意点と発展形をご紹介していきます。

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