知らないと指せない手とは?ミレニアム囲いの注意点と発展形を学ぼう【玉の囲い方 第50回】

前回のコラムでは、前々回までにご紹介しました「ミレニアム囲い」の別バージョンをご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、ミレニアムに組むまでの手順の復習です。

初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲7七角、▲6六歩、▲2五歩、▲6八角、▲6七金、▲7七桂、▲8九玉、▲7八金、▲5七角、▲5九銀、▲6八銀右、▲8八銀、▲7九銀右(第1図)。

【第1図は▲7九銀右まで】

それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点

第2図をご覧ください。

【第2図は△6五歩まで】

後手が▲7七桂と跳ねる前に、角筋を生かして急襲してきたところです。▲6五同歩は、もちろん△9九角成と香を取られてしまいます。また、▲5七角と6六に利きを足しても、△6六歩▲同金△6二飛など、後手に気持ちよく指されてしまいます。

角筋を生かして急戦を仕掛けられる手に注意しましょう。で終わりたいところですが、実は後手の攻めを咎める手があります。この手は知らないときっと指せないでしょう。少し考えてみてください。

おわかりになりましたでしょうか? 正解は堂々と▲6五同歩と取る手です。え!? △9九角成と玉のそばに馬を作られながら香を取られちゃうじゃない。どう考えても先手不利じゃん。まあ、普通はそうですよね。玉のほうにある香を取られながら馬を作られ、その代償がたったの一歩なんてとてもじゃないけど釣り合いは取れません。しかし、▲8八銀(第3図)と上がってみるとどうでしょうか? 

【第3図は▲8八銀まで】

馬取りなので△9八馬と逃げますが、そこで▲7七角△4四銀に▲9九銀としたらどうでしょう? 9八の馬に逃げ場はありませんね。△9九同馬▲同角と進むと▲2四歩や▲8二角の楽しみがあり、角と銀香の二枚換えでも先手よしなのです。

また、△9八馬に対して▲7七角のところでは、▲2四歩△同歩▲同角ももちろん有力です。ただし、そこで△3二銀と引かれるとすぐには決まらないので、▲7七角から馬を取ってしまうのが安全でしょう。

というわけで、△6五歩は必要以上に恐れる必要はありませんが、例外はあります。第4図をご覧ください。

【第4図は△6五歩まで】

第2図とそっくりですが、後手の△7四歩が△5四銀に代わっています。これも▲6五同歩△9九角成に▲8八銀で変わらないじゃない? と思われるかもしれませんが、▲6五同歩には△同銀と取ってきます。▲6六歩は△同銀▲同金△同角▲7七銀△4四角で、次の△6六歩の垂らしや△6二飛が厳しい狙いとして残っています。△6五同銀に▲2四歩も、構わず△6六歩▲7七金△5六銀▲2三歩成△6七歩成で先手不利です。このように△5四銀を早く上がってきている場合には、▲6八角に代えて▲5七銀など、6筋を厚くして別の囲いにするなどしなければなりません。次に囲いの発展形を見ていきましょう。

囲いの発展形

第5図をご覧ください。

【第5図は▲8八銀まで】

第1図から▲8六歩、▲8七銀、▲8八銀と進めた局面です。第1図と比べるとさらに上部が厚くなりました。この形になれば、後手に△9五歩と突き越されている形に対しては、▲9六歩△同歩▲同銀と逆用して動いて行くことができます。その半面、玉の脇があいてしまいましたが、▲7九角と引けば角でカバーすることができます。また、駒を入手して7九へ打ちつければさらに堅固になりますね。ただし、やはり飛車交換になった場合は4九などに打たれると王手になってしまいますので、神経は使う形とはいえます。臨機応変に、第5図へ進展させるかどうかを判断していきましょう。

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