角道を開けない舟囲い?「鳥刺し」の特徴と手順とは【玉の囲い方 第45回】

今回のコラムでは、「鳥刺し」についてご紹介します。これは囲いというよりは、戦法のひとつといったものですが、ここ数回のコラムの流れということでご紹介します。これはどういったものなのか? まずは、そちらを見ていきましょう。

囲いの特徴

第1図をご覧ください。

【第1図】

あれ? これは舟囲い? 前に舟囲いの発展形で同じ形を見たんだけど。そう思われる方もいるでしょう。では、以前ご紹介しました舟囲いと見比べてみましょうか。第2図が以前ご紹介した形です。

【第2図】

さて、なにか気がついたところはありますか? え? 右金も上がってないし、ただ囲いの途中じゃないかって? まあ確かにそう見えるところでもありますね。ですが、ここ数回のコラムを読んでいただいている方は大きな違いが分かっていただけると思います。そうです。角道を開けていませんね。なぜ角道を開けていないのか? 極端な例ですが、そちらを見ていきましょう。それでは第3図をご覧ください。

【第3図は△4五歩まで】

いま後手が△4五歩と突いてきたところです。ここで▲3四飛と銀を取ると? そうですね、△8八角成▲同玉△3四飛とされると銀は先に取れましたが、後に飛車を素抜かれてしまいました。

では、もし第3図の局面で先手の7六の歩が7七だとどうでしょうか? ▲3四飛と取りますと、同じように△7七角成▲同角△3四飛と飛車を素抜かれてしまいます。ですが、第3図では角交換をして3四の飛車を取りましたが、先手の歩が7七ですと角が向かい合っていないため、後手は角と歩の交換で3四の飛車を素抜くことになります。

以上のことをまとめますと、第3図から▲3四飛△8八角成▲同玉△3四飛となりますと、銀と飛車の交換で先手が大損しますが、歩が7七の場合は▲3四飛△7七角成▲同角△3四飛となって、角・銀と飛車・歩の交換となって先手の大得となります。もし、△7七角成に代えて△4六歩なら▲4四銀と打てば、△同角は▲3二飛成があるため後手は3三の角が身動き取れず、角銀交換の駒得が約束されます。

また、歩が7七ですと、▲7九角と引き角にして活用もしやすいところもメリットです。角が向かい合わない、引き角にしやすいというところが鳥刺しの大きな特徴です。さらに、▲7六歩と突けばいつでも急戦の形に戻せるところもポイントです。それでは、第1図までの組み方を見ていきましょう。

囲いを組むまでの手順

初手から、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩(第4図)。

【第4図は▲5六歩まで】

ここまでは、前回までのご紹介しました飯島流引き角戦法銀冠穴熊と同じ手順ですね。鳥刺しは、この二つよりも囲い方が簡単なところが特徴です。第4図から、▲6八玉、▲7八玉、▲2五歩、▲3六歩、▲6八銀、▲5七銀左(第5図)。

【第5図は▲5七銀左まで】

飯島流は▲7八銀~▲7九角~▲5七角としてから玉を、銀冠穴熊は▲7八銀~▲8六歩~▲8七銀としてから玉を動かしましたが、鳥刺しは玉の移動が7八までなので、すぐに移動して問題ありません。玉も左銀も神経を使わずにスムーズに5七まで移動できますね。ここから▲5八金右や▲9六歩としたり、▲4六銀~▲7九角と引き角に使ったりもしますが、このコラムではひとまず第5図を完成形としておきます。

次回は組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。

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