今回は西田拓也四段のデビュー戦を紹介します。西田四段は年齢制限ギリギリで三段リーグを突破した苦労人です。16歳の若さで三段になりました。「なぜここまで苦しんできたのかは説明がつかない」と畠山鎮七段。少し考え「中終盤の力があるのに、序盤で神経質になりすぎていたことが三段リーグではマイナスに響いていたのかもしれません」と続けます。
西田四段の三間飛車に星野良生四段は引き角戦法で対抗しました。「三間飛車には珍しい作戦です。ゴキゲン中飛車に対する『超速』の創始者である星野四段らしい工夫です」と畠山七段。
第1図は△3一角と引いたところです。「普通は▲5八飛ですが、これには△5三角▲5五歩△同歩▲同角△4二玉(参考図1)が後手の予定だったのではないでしょうか」(畠山七段)。
【第1図は△3一角まで】
【参考図1は△4二玉まで】
本譜、図ですぐに▲5五歩△同歩▲同角と動いたのが機敏でした。今度△5三角なら▲5四歩と打ちやすい。よって実戦は△5三銀ですが、ここに銀を上がらせることで後手の構想を崩すことに成功しました。
そして第2図の▲8六歩で「大袈裟に言えば将棋が終わっています」と畠山七段は解説します。続く△同歩に対して▲5三歩が激痛です。
【第2図は▲8六歩まで】
やむなく後手は▲5三歩に同飛と取りますが、▲8六角△5二飛▲3一角成△同金▲5三歩△同飛▲8八飛(第3図)で後手は収拾がつきません。
【第3図は▲8八飛まで】
以下△7一金に▲8二角から8筋を突破した先手の快勝となりました。先手・西田四段の流れるような攻めで、玉を囲う前に決着がついてしまいました。