A級プレーオフの羽生VS豊島戦でも採用!後手番における中住まいの注意点と発展形とは?

前回のコラムでは、後手番における「中住まい」の組み方をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。わかりやすいように手順、図面はすべて先後逆で解説していきます。

それでは、中住まいに組むまでの手順の復習です。

初手から、△3四歩▲7六歩△8四歩▲2六歩△8五歩▲2五歩△3二金▲7八金△8六歩▲同歩△同飛▲2四歩△同歩▲同飛△7六飛▲7七角△7四飛▲2六飛△8四飛▲8八銀△2三歩▲5八玉△5二玉▲3八銀(第1図)。

【第1図は▲3八銀まで】

まずは組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点

初手から△3四歩▲7六歩△8四歩▲2六歩△8五歩▲2五歩△3二金▲7八金△8六歩▲同歩△同飛▲2四歩△同歩▲同飛△7六飛と進んだとき、すぐに▲5八玉と上がるのはどうでしょうか? これで済めば▲7七角と上がらずに駒組みができますが、大悪手です。△7四飛や△8六飛なら何事もありませんが、△8八角成(第2図)と角交換をされるとどうでしょう? 

【第2図は△8八角成まで】

▲8八同銀は△7八飛成、▲8八同金も△7九飛成と開始早々金駒を損しながら飛車を成り込まれていっぺんに将棋が終わってしまいます。△8八角成に▲7七歩としても、△7八馬▲同銀△8六飛▲8七歩に△2三歩と受けられてやはり金損となってしまいます。ですので、△7六飛のときは△8八角成を防がなくてはなりません。

また、前回ご紹介した▲4八銀・▲3八金型に組む際の注意点(今回は先後反転でご紹介していますので、実際は△6二銀・△7二金型)です。

【第3図は△2三歩まで】

第3図の局面で▲4八銀と上がると、△7七角成▲同桂△8九角(第4図)で、これも一気に不利となってしまいます。

【第4図は△8九角まで】

▲7九金は△6七角成と馬を作られますし、▲6八玉は△7八角成▲同玉△6八金で、▲同玉は△8八飛成ですし▲8九玉も△8七歩▲7九銀△同金▲同玉△8八歩成といずれも突破されてしまいます。第4図で▲8五歩と打つのは△8二飛などと逃げてくれれば▲6八金で8九の角がタダ取りできますが、飛車取りに構わず△7八角成とされると△6八金までの詰めろとなって飛車を取るヒマがなく必敗です。

第3図から、▲4八銀ではなく▲5八玉なら△7七角成▲同桂△8九角には▲7九金と引けば、6七の地点は玉が利いていますので、この攻めは成立しません。もう少し進めて、▲7九金に△8七歩は▲8九金△8八歩成▲8五歩で大丈夫です。

囲いの発展形

第1図からは▲8七銀~▲8六飛と過激に飛車をぶつけたり、▲3六歩~▲3七桂と桂を活用したり、▲3六歩~▲3七銀~▲4六銀と右銀を繰り出したりなど、さまざまな指し方があります。また、前々回ご紹介したように、▲3六歩~▲3七桂~▲4八金~▲4六歩~▲4七銀と組む形ももちろん有力です。第5図は今年3月のA級プレーオフ、▲豊島将之八段ー△羽生善治竜王戦(便宜上先後逆)です。

【第5図は▲4六歩まで】

ここから、△9六歩▲同歩△9八歩と豊島八段が仕掛けて戦いになりました(結果は羽生勝ち)。▲4七銀まではいきませんでしたが、このような大舞台で指されているということは、優秀な形として認識されているという証明にもなりますね。

プレーオフ決勝でも、稲葉陽八段と相掛かりの後手番でしたが、この形(これも▲4七銀と上がる前の形)を採用して勝利し、名人挑戦を決めました。

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