わずか5分で決断?伊藤博文七段の早見えと鮮やかな終盤の指し手が光る一局【プロの技】

伊藤博文七段は順位戦からフリークラスに陥落した後、初めて復帰を果たした棋士です。畠山鎮七段は伊藤七段について「誰にでも気さくに話しかけ、ユーモアに溢れる人柄です。『しんどい、今日はあかん』と言う日ほど手強い。力があるのにそう見せないのが伊藤流です」と話します。棋風に関しては「独特の将棋で捻り合いに強い」と続けました。

宮本広志五段奨励会を28歳で突破しました。26歳の年齢制限に達していましたが、三段リーグで勝ち越しを続けて在籍を延長しました。相当な重圧との戦いだったでしょう。2期目のC級2組順位戦で昇級を決め、五段に昇段しました。同じ森安正幸七段門下の畠山七段は「宮本五段は早指しで決断のよい実戦派です」と話します。

宮本五段の振り飛車に伊藤七段は左美濃で対抗しました。第1図は、第30期竜王戦6組昇級者決定戦の対局で、先手の伊藤七段が▲5四桂と打ったところです。次は▲6二桂成で7二の金を狙うことができます。「確実な攻めです。アマチュアの方には特に参考になると思います」と畠山七段。

【第1図は▲5四桂まで】

第2図は△6五銀と出たところです。先手はわずか5分で▲同馬と取りました。決断の早さに畠山七段は唸ります。以下△同歩▲7二成桂△同銀▲7一銀△8三玉▲8二金△9四玉▲9五歩△同玉▲6五飛成と追いかけました。

【第2図は△6五銀まで】

そして最後は第3図からの▲8六銀で後手玉は詰み筋に入りました。以下△同角成▲同竜△同玉▲7七角△8五玉▲9四角△7四玉▲7五歩△6四玉▲5五銀まで、宮本五段の投了となりました。伊藤七段の早見えと鮮やかな終盤の指し手が光る一局でした。

 

【第3図は△9七同成香まで】

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