一点集中で矢倉を攻略!かつてはタイトル戦にも登場していた「雀刺し」とは

前回までは、15回にわたり、急戦矢倉での指し方をご紹介いたしました。

今回のコラムからは、雀刺しで矢倉を攻略していく指し方をご紹介いたします。まずは、雀刺しとはどういう形の戦法なのか? そちらを見ていきます。それでは、第1図をご覧ください。

【第1図】

まずはわかりやすいように、先手側の駒のみ配置しておりますが、矢倉での駒組み途中の局面です。通常でしたら、ここから▲6七金右、▲6八角、▲7九玉、▲8八玉(第2図)と囲っていきます。

【第2図は▲8八玉まで】

きれいな矢倉囲いに玉がおさまって、非常に堅いですよね? ですが、雀刺しを目指すときは、玉はこのままの位置で囲わずに、攻撃態勢を築いていくことが多いです。それでは、どう指していくのか? 手順を追って見ていきましょう。

まずは、▲3七桂と桂を跳ねます。続いて、▲1七香と香を上がり、その下に飛車を▲1八飛(第3図)と回って雀刺しの基本形が出来上がります。

【第3図は▲1八飛まで】

先に▲1七香と上がって、▲1八飛、▲3七桂という手順でも構いません。7九の角が、遠く1三の地点を狙っています。この形が、雀を捕らえるときに、槍を斜めに構える姿に似ていることから、雀刺しと呼ばれるようになりました。プロ棋戦でも、かつてはタイトル戦の舞台でも登場するほど、指されていましたが、有力な対策が見つかったために、いまではほとんど指されることはありません。第4図は、第3図に後手の矢倉囲いを加えた局面です。

【第4図】

1八の飛車、7九の角、3七の桂、1七の香で後手陣の端を集中的に狙っています。この形も、これまでにご紹介した右四間飛車や、急戦矢倉のように破壊力が非常に高そうに見えますよね? プロ棋戦で指されることは、ほとんどありませんが、中級者同士などでしたら、一点集中の破壊力はなかなかのものですので、指してみるとおもしろいと思います。

右四間飛車や急戦矢倉では、銀が攻めに参加していきますが、この雀刺しは銀は4八のままで、攻めに加わることは少ないです。その代わりに、右四間飛車や急戦矢倉では出番のなかった、1筋の香が攻めに加わってきます。また、右四間飛車や急戦矢倉は、4筋などから攻めましたので、金銀の堅い守りを突破していく感じでしたが、雀刺しはそこに比べると比較的守りの薄い1筋から攻めていくところも大きな特徴と言えるでしょう。

それでは第4図からどう攻めていくのか? まずは、さっそく▲1四歩(第5図)と突いて、攻めていく変化から、次回のコラムで見ていきましょう。

【第5図は▲1四歩まで】

おすすめの記事

棋士・棋戦

2024.01.16

里見、2年連続の挑戦を跳ね返す