山本六段VS斎藤七段。将棋の常識が換わる可能性を秘めた一局【プロの技】

今回取り上げるのは、2月22日に行われた第65期王座戦二次予選の▲山本真也六段ー△斎藤慎太郎六段(現七段)戦です。

山本六段は独自の序盤戦術を見せる、関西の隠れた戦術家です。最近は将棋ソフトを研究に活用していると聞きました。斎藤七段は2年前の電王戦に出場して勝利を収めました。今回は第2図からご覧ください。

【第2図は▲4八銀まで】

畠山七段は「近未来の将棋、SFみたいなものですね」と表現します。第1図は少し前の局面です。

【第1図は△5一金右まで】

セオリーなら金寄りに代えて△3二金ですが、▲2四歩と突きやすくなります。以下△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成▲7七角△8九馬▲1一角成(参考図)となり、次の▲2四桂が厳しい攻めになります。

【参考図は▲1一角成まで】

「実戦のように△5一金右なら▲2四桂の筋がないというわけです。4一の金にヒモをつけながら、玉の可動域を広げています」と畠山七段は解説します。実戦は第2図から△3二金▲7八金△3三角と進みました。この後は激しい攻め合いになり、最後は後手の逆転勝ちとなりました。

「驚愕なのは第2図ですよね。この将棋が流行るとは思えないし、私は、ついていけないところがあります。将棋はこの先どうなってしまうんだろうと。ただ、横歩取りで7八や3二に金を上がるのすら省略できないかと追究し、激しく主張がぶつかっています。将棋の常識が換わる可能性を秘めています」と畠山七段。

後日「弟子の将棋が理解できない」と、同じように門下生を持つ棋士にもらしたそうです。すると「全部わかってしまうような将棋を指す弟子では、見込みがなさすぎるでしょう」という答えが返ってきて、なるほどと納得したそうです。

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