斎藤七段vs福崎九段。肉を切らせて骨を断つ?!華々しい応酬が光る一局【プロの技】

今回は、1月29日に関西将棋会館で行われた第43期棋王戦予選▲斎藤慎太郎七段-△福崎文吾九段戦を取り上げます。

福崎九段は十段、王座のタイトルを獲得した実績を持ちます。穴熊の使い手として「妖刀」と評される切れ味鋭い攻めで知られています。また、ユーモアあふれる大盤解説でも人気です。斎藤七段はB級1組への昇級を決め、第88期棋聖戦では羽生善治棋聖の挑戦者となるなど絶好調の若手です。本局は「駒の押し売り」がテーマになっています。

第1図は△5四歩と打ったところですが、なんと銀の逃げ場所がありません。先手の大失敗のようですが、以下▲同銀△同金▲7五歩△4七角▲4一角と斎藤七段は攻めました。最後の▲4一角が後手玉の急所を突いた攻めです。7四の地点を狙いつつ、▲2三歩から▲2四飛を狙っています。5四の金が浮いているので銀損でも大変な形勢だったそうです。斎藤七段に後日聞くと、図の少し前に予定変更があり、とっさの修正策だったそうです。

【第1図は△5四歩まで】

次は福崎九段の妙技です。第2図の▲6七桂に平凡な△3七角成は▲2四飛が金当たりになります。

【第2図は▲6七桂まで】

以下△7六桂としても▲同銀△同歩▲7五桂打と、6七の桂を軸に攻められてしまいます。とはいえ放置していても▲7六歩の合わせから7五の地点を狙われます。福崎九段は本譜、第2図で△5五金と出ました。本コラムの監修・畠山鎮七段は「渾身の勝負手」と評します。▲同桂でタダですが、桂の利きを7五からそらした」わけです。実戦はそこで△3七角成としましたが、飛車を逃げずに▲6三香(第3図)が決め手でした。

【第3図は▲6三香まで】

以下6三同銀なら▲8一飛です。実戦は△7一金と逃げましたが、▲6二金から斎藤七段が寄せ切りました。

畠山七段は「第1図の5五の銀、そして第2図の△5五金。ここまで駒を押し売りする将棋は珍しい。将棋の醍醐味とも言える華々しい応酬が光りました」と解説しました。

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