勝負師、研究者、芸術家のバランス。斎藤七段が見つけた自分だけのスタイル【斎藤七段インタビュー vol.3】

3回目は、プロ棋士となって、将棋に対する考えや思いについて語っていただきました。その中でも第4回電王戦でコンピュータソフトと対局したことは、自身の将棋観に大きな影響を与えたようです。


第4回電王戦で第1局をコンピュータソフト「Apery」と戦った。撮影:君島俊介

 ーープロ棋士になってから、将棋に変化はありましたか?

「三段リーグは勝負一本なので、勝つための手を指してきました。プロは棋譜が残ります。これからは伸び伸び、自分らしい手を指せるのではと、楽しみのなかで棋士生活が始まりました」

 ーー実際はいかがでしたか?

「当然ですが成績を残すことと、面白いと思ってもらえることの両立は難しい。それでも常に考えています。ここ数年感じるのは、他の棋士とは違う個性をだしていきたいということ。勝つだけならソフトの方が上かもしれないですし、実際にそういう結果にもなっているので」

 ーーここ1、2年はひとつの壁を乗り越えられたと思うのですが?

「ありがとうございます。やはり昨年の電王戦、これ以外は思い浮かばないですね。人に見られるなかで頑張れる自分を見つけることができました。あそこで臆せずに指せるのなら、今後の大一番でも思い切って指せるのではないかと、思えるようになりました。ソフトとの対戦は勝つことが絶対の勝負です。準備期間中は三段リーグに戻ったような感覚でした。一局のためにやりきる、勝つことの大きさをあらためて感じました


イベントの席上対局での斎藤七段。撮影:池田将之

 ーーその後、公式戦にどのような変化がありましたか?

「電王戦に限っては勝負師と研究家の顔が全てで、芸術家としての面はゼロでした。この3つの要素のバランスはまだまだ課題です。自分ではちょっと甘く、勝負師スタイルではないような気もします。いま成績が上向いているのは、少しずつ自分のスタイルが見えてきたからではないかと思います。棋士になってからは自分の何がよくて、何が悪いのか、それがよく分かっていませんでした。いまは勝つ将棋を指したいし、将棋を楽しみたいという気持ちもあります。相手が得意とする戦形を必死に研究し、それを打ち崩す一手を見つける。そうですね。相手の本気が見られるのを楽しみで、そのなかで戦うのが自分のスタイルかなと思っています」

最終回となる次回は、斎藤六段と同世代のライバルについてのこと、そして私生活のことについても聞いてみました。ぜひ、ご覧ください。

取材協力斎藤慎太郎七段

2004年に6級で畠山鎮七段に入門。2012年に四段。2017年に七段。第43回将棋大賞で勝率一位賞・新人賞を受賞。

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