升田幸三賞受賞者同士、飯島七段 VS 松尾八段の対局。飛車銀両取りに対する切り返しがすごい【プロの技】

本コーナーの監修・解説は飯島栄治七段が務めています。今回は飯島七段の対局から、9月15日のB級1組▲飯島七段-△松尾歩八段戦を取り上げます。

飯島七段は対振り飛車だけでなく、相居飛車で得意な相掛かりでも▲7六歩と突かずに引き角にする作戦を多用しています。『将棋世界』2015年10月号の付録で「飯島流相掛かり引き角戦法」を発表しています。本局は引き角にしませんでしたが、しばらく角道を開けずに指しました。松尾八段は居飛車党。横歩取りや「松尾流穴熊」など、新しい指し方を案出。本局のふたりはともに升田幸三賞受賞者でもあります。

第1図を見ると、双方が居玉の将棋であることに気づきます。「居玉は避けよ」といわれますが、玉を囲う余裕さえない、激しい応酬がうかがえますね。第1図は後手が△7七飛成▲同桂△2五角と飛車銀両取りをかけたところ。▲3六飛とすれば両取りを受けられますが、△3五歩から攻められて先手がいけません。困ったようですが、うまい切り返しがありました。

【第1図は68手目△2五角まで】

実戦の進行は▲7四歩△3四角▲7三歩成△5二銀▲6四桂(第2図)。

【第2図は73手目▲6四桂まで】

両取り逃げるべからず」という格言があるように、飛車や銀をそのままにして▲7四歩が好手でした。△同銀は▲5四飛が王手銀取りなので、△3四角と飛車を取りましたが、▲7三歩成から▲6四桂と先手が先に急所を突くことができました。手順中、▲7四歩に△4七角成としても、▲7三歩成△5七馬▲5八金(参考図)で先手よしです。

【参考図は▲5八金まで】

飯島七段「参考図で△4五桂と跳ねる鬼手はありますが、わずかに詰めろではありません。第1図の前に△7七飛成を▲同金(参考図で7七桂が8九桂、8八金が7七金の形)としていたら、△4五桂が詰めろになってまずいところでした。運がよかったです」

第2図の▲6四桂の局面も先手よし。以下は松尾八段の攻めを耐えて、飯島七段が制しました。まさに「両取り逃げるべからず」という格言があてはまった一局でした。

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