子供将棋スクール受講者を対象とした科学的データから見る、将棋を指すことの着目点

更新:2018年10月18日 12:13

筑波大学附属病院
リハビリテーション部バランス研究班,つくば糖尿病予防研究会
理学療法士:鈴木康裕,田邉裕基,椿拓海,古薗弘隆
医師:羽田康司

筑波大ロゴ2018年10月7日(日)、当研究会はAP西新宿にて子供将棋スクール受講者(以下生徒)25名のバランス測定を実施しました。(男女22 / 3名,年齢約9歳,将棋経験年数約2年)測定人数が少なかったため統計的には不十分な面もありましたが、解析結果からはやはり興味深い傾向(新しい知見)がいくつか浮かび上がりました。

将棋とバランス能力の関係性_01 将棋とバランス能力の関係性_02 将棋とバランス能力の関係性_03

今回得られた新しい知見について以下に示します。

(1)子供将棋スクール生徒と一般の小学生のバランス能力(修正姿勢安定度評価指標,modified index of postural stability; mIPS)を比較した結果,高学年の子供将棋スクール生徒(10名)のバランス能力は,一般小学生高学年より高い水準にある傾向がみられた。しかし低学年(15名)ではその傾向がみられなかった。
⇒将棋を指すことによって,子供のバランス能力(発達?)に好影響を与える可能性がある。ただし,低学年の場合は将棋経験が浅いため,その影響が十分反映されていないと考えられた。

(2)高学年の子供将棋スクール生徒は,子供将棋スクールの等級とバランス能力に負の相関関係の傾向がみられた。つまり,将棋の強い子供ほど,バランス能力が高い可能性がある。一方,この傾向も低学年では見られなかった。
⇒高学年くらいから,「将棋で培われる脳活動≒バランス能力」のシステムが成立し始める可能性がある。低学年と高学年では,システムが相違していると仮説を立てられる。

今回の結果を鑑みると,将棋力(棋力)とバランス能力の関係は,子供の将棋経験が長い場合に強い傾向がありそうです。つまり,低学年から将棋を始めて高学年へ至る過程において,棋力が向上することによってバランス能力に変化を生じさせる,と言えるかもしれません。そのため将棋経験の豊富な中学生や高校生ではどうだろうか,という興味も沸きます(大学生では検証済み)。また,逆にバランス能力を訓練で高めた場合に,棋力にも好影響を与えるのかどうかも興味深いです。
その他,現役の棋士,また高齢者の将棋愛好家などのデータが揃いますと,全体を俯瞰(ふかん)した「将棋とバランス能力の関係性」に科学的な根拠が示せるのではないか,と考えます。

今後は,子供将棋スクールの会場(AP西新宿)と隣接する新宿将棋センターにおいて,より科学的な根拠を示せるようにデータ収集を進めることが出来ればと考えております。

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