藤井、竜王初防衛

藤井、竜王初防衛

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年12月16日

 初防衛を目指す藤井聡太竜王に挑むのは復位を目指す広瀬章人八段が挑んだ第35期竜王戦七番勝負。両者はタイトル戦で顔を合わせるのは初めてとなった。

第35期竜王戦七番勝負第1局

 第1局は東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」にて。角換わり腰掛け銀から先手の広瀬がリードを奪った。苦境の藤井は必死に勝負手を繰り出していく。

【第1図は▲8六同玉まで】

 先手は手番がくれば▲3二銀のように攻めていけばいいので、後手はこの瞬間に勝負を掛けるしかない。△7二飛が強烈な勝負手。▲同馬と取らせて△7四桂から先手玉に迫るのが狙いだ。しかし▲9七玉△8六銀▲8八玉でわずかに届かない。銀を渡すと▲3二飛からの詰み筋が生じるからだ。△4一銀と手が戻ったが、▲6三馬が冷静な手で広瀬が勝ち切った。

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写真:中野伴水

第35期竜王戦七番勝負第2局

 第2局は京都府京都市「総本山仁和寺」にて。角換わりから広瀬が△3三金型+腰掛け銀と凝った作戦をぶつける。

【第2図は△4七歩成まで】

 ▲4七同金は△3八角があるので、先手も素直には応対できない。▲3四歩△同金▲5六角△4五銀▲4七金がうまい切り返し。△8四飛▲8八歩△3八角▲3九飛△3七歩▲同金△5六角成▲同銀△同銀に▲4七金がピッタリで先手が抜け出している。難解な中盤を制した藤井が追いつく。

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写真:文

第35期竜王戦七番勝負第3局

 第3局は静岡県富士宮市「割烹旅館 たちばな」にて。相掛かりから先手の広瀬がはっきりと優位に立ったが、終盤で藤井にチャンスを与えてしまう。

【第3図は▲8二角まで】

 △7五飛が逆転の一撃。▲同銀△同角となった図が意外に受けにくい。▲6六歩△7七歩▲8八金と受けたが、△7三銀と角に当てていけばバラバラの先手陣はまとめきれなくなっている。広瀬は痛恨の逆転負けで、藤井がリード。

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写真:将棋世界

第35期竜王戦七番勝負第4局

 第4局は京都府福知山市「福知山城天守閣」にて。角換わり腰掛け銀の研究勝負となるが、抜け出したのは藤井。着実に広瀬玉を追い詰めていく。

【第4図は△3一歩まで】

 ▲4六馬が絶品の馬引き。△同馬は仕方ないが、▲4二歩△同玉▲4六銀と進み、先手陣は怖いところがなくなった。以下△8一飛に▲2四角まで後手投了。藤井が快勝で防衛まであと1勝とした。

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写真:中野伴水

第35期竜王戦七番勝負第5局

 第5局は福岡県福津市「宮地嶽神社貴賓室」にて。相掛かりから第3局と似た将棋に進み、難解な中盤戦となる。

【第5図は△3六同飛成まで】

 後手に分のある攻め合いだったが、逆転して先手がチャンスを迎えている。▲4四角△5三金打▲3七歩△2七竜▲3四角と二発の角が攻防で先手が抜け出した。広瀬が制し、藤井に二日制では初の2敗目を与える。

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写真:常盤秀樹

第35期竜王戦七番勝負第6局

 第6局は鹿児島県指宿市「指宿白水館」にて。角換わり腰掛け銀から藤井が素早く仕掛けていく。

【第6図は△3八銀まで】

 第6図の△3八銀は封じ手。飛車を横に逃げる手が自然だが、藤井は▲4六飛と狭いところへ逃げた。△3七銀で飛車が詰んだが、▲5四香△4六銀成に▲2六角が好防手。△4八飛を防ぎながら5三から攻め込む手を狙っている。後手としては▲4六飛に△4四香を打てば先手の▲2六角を防ぐことができた。

 以下は攻めをつないだ藤井が制勝し、シリーズも4勝2敗で決めた。

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写真:常盤秀樹

 これで藤井は竜王戦初防衛。タイトル戦は通算11期目で、負けなしが続く。藤井が2022年も安定した強さを見せた。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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