防衛か、復位か。第44期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負の展望

防衛か、復位か。第44期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負の展望

ライター: 渡辺弥生  更新: 2022年10月07日

西山朋佳白玲・女王、リターンマッチへ

 第44期霧島酒造杯女流王将戦の挑戦者決定戦が行われた。勝ち上がったのは西山朋佳白玲・女王と渡部愛女流三段(囲碁・将棋チャンネルにて2022年9月10日に放映)。渡部が苦しいところから勝負手をはなち、うまく攻めをつなげたかに見えたものの、最後は西山が反撃を決め挑戦権を獲得した。昨年度里見香奈女流四冠(現女流王将・女流五冠)に女流王将を奪われた西山が1年で三番勝負の舞台に戻ってきた。
前女流王将の西山は今期の女流王将戦は本戦からの登場。女流王将戦の予選と本戦は持ち時間25分、秒読み40秒という特殊な早指しルールで、本戦から囲碁・将棋チャンネルで放映されている。タイトル戦は持ち時間3時間、秒読み60秒で、こちらは全局生放送。
三番勝負の展望を予想する。

44jo_oushou_outlook_01.jpg

女流棋界を双肩に担うふたり

 タイトルホルダーはご存知、里見香奈女流王将。現在女流王将のほかに清麗、女流王座、女流王位、倉敷藤花を保持し、女流タイトル獲得合計は49期にのぼる女流棋界の第一人者。2010年度の第32期女流王将戦三番勝負で清水市代女流王将から女流王将を奪取。今期が8期目で、クイーン王将の資格保持者だ。
挑戦者は西山朋佳白玲・女王。女流タイトル獲得合計は10期。今年の春、第15期マイナビ女子オープン五番勝負で里見を破り、初代永世女王の資格を取得した。女流王将戦はまだ奨励会に在籍していた2019年の第41期から女流タイトルホルダーとして参加し、そのまま三番勝負で里見を破って女流王将を奪取。女流棋士みんなにとって高い壁だった里見に強敵が現れた年だった。

44jo_oushou_outlook_02.jpg

今期4度目の番勝負

44jo_oushou_outlook_03.jpg

 タイトル戦で対戦するふたりの成績を比べる場合、数年前の対局までさかのぼるものだが、里見と西山は今度の第44期女流王将戦三番勝負が今年度に入って4度目のタイトル戦で、4月からの棋譜を数えるだけで15局もある。西山は今期の第30期大山名人杯倉敷藤花戦でも挑戦者決定戦で勝利しており、ふたりは第44期女流王将戦三番勝負と現在番勝負真っ最中の第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負と合わせて3つのタイトル戦を前後して戦うことになる。
里見の今期の女流棋戦の成績は23勝9敗、勝率0.7187、西山は26勝11敗、勝率0.7027。全女流棋士中の対局数と勝数ランキングは西山が1位、里見が2位で、このふたりが飛び抜けている。


日付棋戦勝敗戦型
4月5日 第15期マイナビ女子オープン五番勝負第1局 里見(先)勝ち 対抗型の力戦
4月21日 第15期マイナビ女子オープン五番勝負第2局 西山(先)勝ち 相振り飛車
4月26日 第33期女流王位戦五番勝負第1局 西山(先)勝ち 相振り飛車
5月11日 第33期女流王位戦五番勝負第1局 里見(先)勝ち 相振り飛車
5月14日 第15期マイナビ女子オープン五番勝負第3局 里見(先)勝ち 相振り飛車
5月23日 第4期大成建設杯清麗戦挑戦者決定戦 里見(後)勝ち 相振り飛車
5月25日 第33期女流王位戦五番勝負第3局 里見(後)勝ち 対抗型の力戦
5月30日 第15期マイナビ女子オープン五番勝負第4局 西山(先)勝ち 相振り飛車
6月7日 第33期女流王位戦五番勝負第4局 里見(先)勝ち 相振り飛車
6月13日 第15期マイナビ女子オープン五番勝負第5局 西山(後)勝ち 相振り飛車
8月27日 第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第1局 里見(先)勝ち 相振り飛車
9月3日 第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第2局 里見(後)勝ち 相振り飛車
9月10日 第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第3局 西山(後)勝ち 相振り飛車
9月17日 第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第4局 西山(先)勝ち 相振り飛車
10月1日 第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第5局 里見(先)勝ち 相振り飛車

 すべての対戦が大勝負ばかりだ。第15期マイナビ女子オープン五番勝負は西山、第33期女流王位戦五番勝負は里見が防衛した。第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負はまだ番勝負の真っただ中。今年度に入ってからのふたりの対戦成績は里見9勝、西山6勝とわずかに里見が押しているが、西山は自分にとって一番大事な第15期マイナビ女子オープン五番勝負第5局で勝ったのだから、大した問題ではないだろう。 里見と西山が女流王将戦の番勝負でぶつかるのは3度目。第41期は西山が、第43期は里見が奪取した。どちらもフルセットで、今期もまた激戦になるに違いない。女流王将戦は三番勝負なので第1局を制すると防衛、または奪取に王手がかかる。戦型はふたりが得意の相振り飛車になるか、またはいずれかに用意の秘策があるかもしれない。

 第44期女流王将戦三番勝負は10月8日に宮崎県都城市 霧島創業記念館「吉助」にて開幕。囲碁・将棋チャンネル囲碁将棋プレミアムで生中継されます。女流棋界最高峰の戦いにぜひご注目ください。

渡辺弥生

ライター渡辺弥生

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています