第12期加古川青流戦を制するのは ―決勝三番勝負展望―

第12期加古川青流戦を制するのは ―決勝三番勝負展望―

ライター: 夏芽  更新: 2022年10月14日

 2011年に創設し、若手の登竜門として定着した加古川青流戦。棋士の出場資格が四段までと短いため、新しいスターが誕生しやすい棋戦である。
今年、第12期の決勝三番勝負には徳田拳士四段と齊藤優希三段が勝ち上がった。どちらが勝っても初めての棋戦優勝。果たして頂点に立つのはどちらか。

勝率9割台の大型新人

 徳田拳士四段は小林健二九段門下の24歳。今年の4月にプロ入りし、初の山口県出身の棋士が誕生した。
 加古川青流戦は今期が2回目の出場。初戦から宮嶋健太三段、藤本渚三段(現四段)、高田明浩四段、冨田誠也四段に勝って決勝進出を決めた。
 プロ入り後の半年間の成績は19勝1敗(未放映のテレビ棋戦を除く)。勝率9割5分という驚異の勝ちっぷりで、今年度の勝率ランキングで1位を走っている。

【第1図は▲6四角まで】

 徳田四段に印象に残った一局と尋ねると、冨田四段との同門対決を挙げ、「しびれる勝負を経験できた」との答えが返ってきた。第1図。残り時間が少ない中、徳田四段が打った▲6四角が強烈な捨て駒で、以下△同飛▲3一飛成△7一歩▲4二竜△6三飛▲9四歩△同銀▲6二金と進み、あっという間に後手玉を寄せきった。この切れ味の鋭さが徳田将棋の強みといってよいだろう。
 過去には記録係として鶴林寺に行ったことがある徳田四段だが、今回は晴れて対局者として加古川の地に向かう。

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写真:夏芽

初の三段優勝なるか

 齊藤優希三段は深浦康市九段門下の26歳。加古川青流戦は3回目の出場で、岡部怜央四段、石井直樹アマ、里見香奈女流五冠、山本博志四段を相手に勝ち上がってきた。
 齊藤三段は今回が2回目の番勝負。2年前の第51期新人王戦は、奇しくも徳田四段の兄弟子に当たる池永天志四段(現五段)と決勝三番勝負を争った。結果は準優勝だったが、この大舞台の経験は、今回の三番勝負にも生かされるに違いない。
 また、今年度は加古川青流戦だけでなく、新人王戦でもベスト4に入った。惜しくもダブル決勝戦とはならなかったが、安定して上位に入れるのは実力がある証明だ。

【第2図は△3一金まで】

 齊藤三段自身は、今期のトーナメントを「逆転勝ちの将棋が多かった」と振り返る。第2図は準決勝の山本博四段戦。優勢の将棋をひっくり返され、先手よしの局面だが、「諦めずに指した」という△3一金打が粘り強い一手だった。以下▲4四歩△5七成銀▲同金△同竜▲4一銀△4六桂▲同銀△5一竜と、馬を素抜いて再逆転に成功。両者一分将棋の終盤戦では、こういったドラマも起きやすい。
 加古川青流戦の歴史の中で三段での優勝はまだないが、今期の齊藤三段がその新たな1ページを作る可能性は十分にある。

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写真:武蔵

勝負の鍵を握るのは

 両者は三段リーグに入った時期が同じで、4回の直接対決は齊藤三段の3勝1敗。また、昨年9月には新人王戦で当たっており、そこでも齊藤三段が勝った。
 戦型に関しては相居飛車が予想され、それぞれ相手の印象について徳田四段は「中終盤の切れ味が鋭い将棋」、齊藤三段は「研究が深く、局面をまとめるのがうまい」と答えた。三番勝負に臨むにあたっては両者共通して「決断よく、決勝戦に相応しい将棋を指したい」と意気込みを示す。
 今期も決勝戦は兵庫県加古川市にある「鶴林寺」で開催。10月15、16日(土、日)の2日間で決着がつく。プロ入り1年目で栄冠を手にするのか、それとも三段初の優勝か。若々しく、力のこもった熱戦を期待したい。

夏芽

ライター夏芽

2011年から関西を拠点にインターネット中継記者として活動。将棋は指すより見て楽しむタイプ。暇さえあれば書店の将棋コーナーに足を運んでいます。

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