チーム藤井VSチームエントリー 第5回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第三試合振り返り~

チーム藤井VSチームエントリー 第5回ABEMAトーナメント~予選Eリーグ第三試合振り返り~

ライター: 牛蒡  更新: 2022年07月27日

 7月23日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Eリーグ第三試合、チーム藤井(藤井聡太竜王・森内俊之九段・藤井猛九段)とチームエントリー(折田翔吾四段・黒田尭之五段・冨田誠也四段)の戦いを振り返る。

【第1局▲藤井猛九段-△冨田誠也四段】

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 勝ったチームが予選突破となる。この鬼勝負の先鋒は冨田と藤井猛が務めた。藤井猛が急戦にうまく対応して優勢になったが、冨田も容易に崩れず、1図は難しい戦いである。ただし、残り時間は先手8秒、後手2分52秒と差があった。

【第1図は▲5二と寄まで】

 △5一香が先手の勢いを止める受け。以下▲4一と△同金▲6二角△8三飛▲7三と△9三飛▲8四歩に△6一歩も冷静だった。先手はやむなく▲5一角成△同金と切り飛ばしたが戦力不足は明らかであり、128手で冨田が勝った。時間で押し切る形になった冨田は、内容面では不満が残ったようだが、チームを勢いづける大きな1勝になった。

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団体戦らしいコメント。冨田は盛り上げ役としてもチームに貢献した

【藤井聡が1勝を返すもチームは苦戦】

 第2局は藤井聡が黒田に勝った。全体的に藤井聡のペースで進んでいたが、黒田も一時は互角まで押し戻すなど善戦し、チームメイトは「ナイスファイト」とたたえた。

 第3局は▲森内-△折田戦。後手雁木に対し、先手は8八銀型の定跡形から急戦を仕掛ける。△7七角成に▲同玉とした森内の力強い受けと、強気に飛車交換をした折田の踏み込みのよさが印象に残った。折田が攻めきり、チーム2勝目を挙げる。

 第4局は第1局から先後を入れ替えての再戦。最終盤は藤井猛にチャンスがあったが、冨田が何とかしのいで逆転勝利。藤井猛は第1局に続き、残り時間の切迫に苦しんだ。

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リーダーの勝利で1対1のタイに戻したチーム藤井

【第5局▲藤井聡太竜王-△黒田尭之五段】

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 チーム藤井は苦しくなった。もし第5局に敗れれば1勝4敗になる。この窮地を救うべく、リーダーの藤井聡が登場。対する黒田はエース戦法の横歩取りをぶつけた。18手目△6二玉が黒田の趣向。21手目▲7七桂で前例を離れた。

【第2図は△9五銀まで】

 2図から▲3七香△1四角▲3二香成と進む。これは自然な攻めのようで危険だった。そこで△3四飛が厳しく、△3八飛成▲同玉△4七角打以下の詰めろになっている。やや読みにくい筋で藤井もうっかりしたかもしれない。数手後に△3八飛成が実現し、黒田が勝った。黒田の飛車は78手目△2四飛から、△8四飛、△2四飛、△7四同飛、△3四飛、△3八飛成と縦横無尽に活躍した。

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折田「圧倒的強者」、冨田「黒ちゃん、さすが!」

【第6局▲折田翔吾四段-△森内俊之九段】

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 両チームとも1巡目からオーダーを変えずに、ここまできている。第6局は▲折田-△森内戦になった。森内は作戦会議で「定跡を指す気分ではない」と話し、6手目△9五歩から相居飛車の力戦に持ち込んだ。

【第3図は△7一玉まで】

 3図はまだ序盤だが、折田の構想が表れた局面でもある。▲7六銀と玉側の駒を前に出したのが面白い。このあと折田は8筋を徹底的に守りつつ、▲7七桂から▲7四歩で玉側の戦いに持ち込んだ。この構想が功を奏し、121手で折田が勝利。この瞬間、チーム名でもある「下克上」は達成された。

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下克上を達成!黒田と冨田はハイタッチとハグで勝利を喜んだ

 予選Eリーグはチーム渡辺が全勝で1位、チームエントリーが1勝1敗で2位となり、この2チームが本戦に進出した。チーム藤井は惜しくも敗退。
以下は第三試合のまとめ。【総合成績】の並びは、左がチームエントリー、右がチーム藤井。本戦は来週から生放送される。

【総合成績】
第1局 冨田〇-●藤井猛
第2局 黒田●-〇藤井聡
第3局 折田〇-●森内
第4局 冨田〇-●藤井猛
第5局 黒田〇-●藤井聡
第6局 折田〇-●森内
総合  5勝 ― 1勝

【個人成績】
折田四段  2-0
黒田五段  1-1
冨田四段  2-0
藤井聡竜王 1-1
森内九段  0-2
藤井猛九段 0-2

ABEMAトーナメント

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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