チーム天彦VSチーム稲葉 第5回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第二試合振り返り~

チーム天彦VSチーム稲葉 第5回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第二試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2022年06月28日

 6月25日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第二試合、チーム天彦「HADO」(佐藤天彦九段・梶浦宏孝七段・佐々木大地七段)対チーム稲葉「サンライズワン」(稲葉陽八段・服部慎一郎四段・出口若武六段)戦の模様をお伝えする。

 第1局は振り駒の結果、チーム天彦の先手番に。対戦カードは佐藤―服部戦で、相掛かりとなる。中盤で服部の動きを的確にとがめた佐藤が優位に立ち、最後は服部玉が入玉するも、点数勝負で佐藤が制した。「自分がトップで出て行って、おそらく出てくるであろう若手を討ち取るというプランは達成できたので、まずは成功かなと思います」とは局後の佐藤の談話である。

【第2局▲出口若武六段-△佐藤天彦九段】

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 第2局、チーム稲葉は出口がABEMAトーナメントの初陣となったのに対し、チーム天彦はリーダー佐藤が意表の連闘。先後は入れ替わっているが、2局続けての相掛かり戦を指すことに。

【第1図は▲9八金まで】

 第1図はその最終盤。△7六銀打に▲9八金と受けた局面である。対して△8七銀不成▲同金△7六銀打▲9八銀△8七銀不成▲同銀△7六金と進んだ。ここで▲9七金(9八に金駒を打つのは△8六金がある)ならば千日手の公算が高かったが、出口は▲8五銀と打開を図った。だが△8七金▲同玉に△8五飛とこのタイミングで飛車を切られるのをうっかりしていた。以下▲8五同馬△7六銀打▲9七玉△8五銀▲同歩△7六銀成と進み、後手勝勢。チーム天彦はリーダーが貫録を見せて2連勝スタート。

 第3局、チーム天彦は佐々木が登場。対してチーム稲葉は「私が出るしかないですかね」とリーダーの稲葉が出陣。両者は第3回でのチームメイトでもあるが、ここは稲葉が前回リーダーの意地を見せて、チームに初白星をもたらした。そして第4局では服部が梶浦を破り、スコアをタイに戻す。

【第6局▲ 稲葉陽八段-△梶浦宏孝七段】

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 リーダーの作った貯金を吐き出した形になってしまったチーム天彦だが、第5局からは佐々木と梶浦が意地を見せる。まずは第5局で佐々木が出口を破り、再びの白星先行。そして▲稲葉―△梶浦戦の第6局は「研究通りだった」という稲葉が優位に立つも、梶浦の頑張りで難解な終盤戦に。

【第2図は△9五歩まで】

 第2図から稲葉は▲2二銀と割り打った。対して△2三飛や△2三金は後手玉が詰むし、他に受ける手もない形である。しかしこの手自体が詰めろになっているかどうか。梶浦は△9七香▲8七玉△7八角▲8八玉△8七歩▲9七玉△9六歩▲9八玉△7七金と詰めろを掛けて、下駄を預けた。  稲葉は▲5四金から王手ラッシュを掛けるが、実はこの後手玉は詰まないのだ。最後は不詰みが明らかになった時点で稲葉が投げた。「この将棋を勝てたのは大きい。耐えたね、感動した!」と佐藤リーダーは作戦部屋に戻ってきたチームメイトをねぎらった。戻って、第2図では▲2六銀と打てば後手玉が詰めろなので先手の勝ち筋だった。

【第7局▲佐々木大地七段-△服部慎一郎四段】

 第7局は▲佐々木―服部戦で、相掛かりに。実はこの予選Dリーグ第二試合はここまでの7局全てが相掛かりなのである。解説の井出隼平五段も「(序盤の形について)さすがに話すこともないですね」と苦笑していた。

【第3図は△4六歩まで】

 第3図は後手が歩を垂らした局面だが、ここで▲6四歩と垂れ歩を返したのが好判断。△同飛は▲5五角が幸便だ。実戦は△4七歩成▲6三歩成△6五桂▲5二とと進み、先手の優位がはっきりした。次にと金で金駒をはがせることが確定しているし、何より後手は玉が壁なのが痛過ぎるのである。

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 チーム天彦は第一試合に続いての連勝で、予選Cリーグの1位通過を決めた。残る1枠はチーム康光対、チーム稲葉の直接対決で決まる。7月2日(土)放映の予選Dリーグ第三試合をどうぞお楽しみに。

【総合成績】
第1局 佐藤○-●服部(第1局はチーム佐藤が先手番。以下は交互)
第2局 佐藤○-●出口
第3局 佐々木●-○稲葉
第4局 梶浦●-○服部
第5局 佐々木○-●出口
第6局 梶浦○-●稲葉
第7局 佐々木○-●服部
総合5勝―2勝

【個人成績】
佐藤九段 2-0
梶浦七段 1-1
佐々木七段 2-1
稲葉八段 1-1
服部四段 1-2
出口六段 0-2

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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