渡辺名人に斎藤八段が挑む 第80期名人戦七番勝負展望

渡辺名人に斎藤八段が挑む 第80期名人戦七番勝負展望

ライター: 牛蒡  更新: 2022年04月05日

 第80期名人戦七番勝負が2022年4月6・7日(水・木)に開幕する。渡辺明名人は3連覇を懸けた戦い。斎藤慎太郎八段は初の名人獲得を目指す。対戦成績は渡辺8勝、斎藤4勝。前期の名人戦は渡辺が4勝1敗で防衛した。棋界に春の到来を告げる名人戦、今期はどのような戦いが展開されるだろうか。

3連覇を目指す渡辺名人

 21年度の渡辺は大きな戦いがいくつもあった。主な戦績は、名人戦=防衛、棋聖戦=挑戦(奪取ならず)、銀河戦=準優勝、王将戦=失冠、棋王戦=防衛。勝敗は23勝18敗、勝率は5割6分1厘。藤井聡太竜王には苦しめられ、銀河戦で一矢報いたものの、タイトル戦(棋聖戦と王将戦)はストレートで敗れた。

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写真:牛蒡

 ただ、藤井戦を除けば決して悪いシーズンではなかった。永瀬拓矢王座との棋王戦は3勝1敗で防衛。王将戦でしばしば見せた苦悶の表情も少なかった。棋王防衛から名人戦開幕までは2週間以上も空き、その間に指した公式戦は1局のみで、名人戦に向けて研究を深める時間を得られたのも大きい。

 渡辺はタイトル防衛率も高い。名人戦の勝敗予想を世に問えば、渡辺防衛の声が過半数を占めるのではないか。それだけの実力と信頼が渡辺にはある。

斎藤八段は2期連続で挑戦

 斎藤は前期に続いて挑戦者になった。過去に2期連続で名人挑戦を決めた4人(大山、升田、米長、羽生)は、すべて名人経験者だ。斎藤が名人の域に近づいているのは間違いない。A級8回戦で挑戦を決めたあとには、「昨年は1期目で、勢いだけでいった可能性もあるのかなと思っていたのですが、今期はしっかりした将棋を指せていた気がします」と話した。

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写真:牛蒡

 21年度の成績は25勝16敗、勝率は6割1分0厘。前年の20年度は25勝15敗、勝率は6割2分5厘。この2年間は名人戦以外に挑戦権獲得や棋戦優勝はない。昨年度と比べてデータ上の上積みは見られないが、上記のコメントにあるように、順位戦の内容には手応えを得ているようだ。前期名人戦で2日制を経験したこともプラスに働くだろう。

 関西棋界の勢いも斎藤の背中を押すかもしれない。21年度のタイトル戦は8つのうち5つ、一般棋戦(若手棋戦を含む)は6つのうち5つを関西本部所属の棋士が制した。順位戦の昇級者(名人挑戦の斎藤を含む)も12人のうち6人を占め、西高東低の勢力図が形成されつつある。

シリーズの戦型予想

 前期の名人戦は第1局から順に、矢倉、相掛かり、矢倉、矢倉、雁木だった。第1局は斎藤が勝ち、その後は渡辺が4連勝した。斎藤は「昨年とは違う将棋を指したい」と話しており、戦型選択が注目される。

 以下は21年度の両者の成績をもとに書いている。矢倉はどちらもまずまずの成績だった。横歩取り(後手)と振り飛車は指されていない。ポイントになりそうなのは角換わりと相掛かりだ。

 まずは角換わり。斎藤は後手番で0勝4敗だった。続いて相掛かり。こちらは逆に渡辺が後手番で0勝5敗。渡辺の先手角換わりと斎藤の先手相掛かりはそれほど多くないが、名人戦では採用するのではないか。いずれにしても先手番で負けないことが重要だ。

全国を巡る名人戦

 最後に名人戦の日程を以下に記す。東京の椿山荘から始まり、東北から九州まで全国各地を転戦する。将棋の内容はもちろん、棋譜中継や動画中継を通じて、各地の魅力も感じていただければ幸いである。

第1局 4月6、7日(水、木)東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
第2局 4月19、20日(火、水)石川県金沢市「金沢犀川温泉川端の湯宿・滝亭」
第3局 5月7、8日(土、日)福岡県福岡市「アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ」
第4局 5月19、20日(木、金)山口県山口市「名勝・山水園」
第5局 5月28、29日(土、日)岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」
第6局 6月7、8日(火、水)山梨県甲府市「常磐ホテル」
第7局 6月24、25日(金、土)山形県天童市「天童ホテル」

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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