春の戦いー第15期マイナビ女子オープン五番勝負展望

春の戦いー第15期マイナビ女子オープン五番勝負展望

ライター: 相崎修司  更新: 2022年04月04日

 将棋界も新年度を迎えた。名人戦と並ぶ4月の風物詩とも言えるのが、マイナビ女子オープンである。15回目を迎えた今期の五番勝負は、ここまで4連覇中の西山朋佳女王に、里見香奈女流四冠が挑む。

挑戦者 里見香奈女流四冠

15mynavi_outlook01.jpg
写真:文

 挑戦者の里見女流四冠にとっては第12期以来の五番勝負登場で、本棋戦では通算3度目の挑戦となる。女流タイトル通算47期という圧倒的な実績を誇る里見だが、女王獲得はまだ1期で、番勝負への登場回数も含めて意外と少ない。とは言え昨年度の成績は40勝10敗の勝率8割で、17連勝も達成しており、女流棋界の記録4部門のうち三冠(対局数は伊藤沙恵女流名人の53局)を制している。以前は西山との直接対決でやや分が悪かったが、昨年度は霧島酒造杯女流王将戦とリコー杯女流王座戦で西山に挑戦し、いずれも奪取している。その後の岡田美術館杯女流名人戦では伊藤に敗れ失冠したが、本棋戦で女流五冠復帰を目指す。

受けて立つ 西山朋佳女王

15mynavi_outlook02.jpg
写真:玉響

 対して受けて立つ西山女王。本棋戦は第11期から4連覇中で、今期は「永世女王」の称号もかかっている。昨年度は里見とのタイトル戦では敗れているが、直近の直接対決となった1月の大成建設杯清麗戦では167手の大熱戦を制している。また新設のヒューリック杯白玲戦・女流順位戦で圧倒的な強さを見せ、第1期白玲の地位に就いた。本棋戦と並行する形で行われる女流王位戦でも挑戦を決めており、こちらは里見が女流王位のタイトル保持者だ。両者による十番勝負が4~6月における見どころと言えそうだ。

【図は▲4六銀まで】

 図は両者が対戦した第12期五番勝負の第4局。里見が桂取りに銀を立った局面だが、西山はこれを見て「よくなったなと思いました」と振り返っている。以下は△1九飛成▲9五香△9四歩▲4三歩△同金▲4五銀△6四香と進んだ。香車を取って6筋に狙いをつけるのが急所で、先手玉は8筋の壁がたたっている。

 改めて今期の五番勝負をとみると、まず西山が振り飛車を指すのはほぼ間違いないだろう。対して里見が相振り飛車を選ぶか、自身が居飛車の対抗形を目指すかである。これまで27局(西山の14勝13敗)あった両者の対戦では相振り飛車が半数以上を占めている。また昨年度における両者の対戦は事実上、全局が相振り飛車だった(女流王座戦第3局は里見が玉を左に囲っているが、その前に中飛車に振っている)。こうなると今回のシリーズでも相振り飛車がメインとなりそうだ。

 女流棋戦以外のタイトル戦で相振り飛車が出現するのは極めて珍しく(過去のデータベースを当たっても30局に満たない)、2017年の第58期王位戦第4局▲菅井竜也七段―△羽生善治王位戦(段位は当時)を最後に登場していないが、女流棋界ではトレンドになっている。

 振り飛車党同士の華やかな頂上決戦に、注目である。

 
相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています