藤井強し、史上最年少四冠に 第34期竜王戦七番勝負を振り返る

藤井強し、史上最年少四冠に 第34期竜王戦七番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年01月27日

 豊島将之竜王に藤井聡太王位・叡王・棋聖が挑戦した第34期竜王戦七番勝負。両者は王位戦七番勝負、叡王戦五番勝負に続き、今期3度目の激突となる。

第34期竜王戦七番勝負第1局

 第1局は東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」にて。相掛かりから先手の藤井が横歩を取り、歩得を主張する展開となった。

【第1図は△8九飛成まで】

 後手の押している将棋だったが、強く▲7一飛と打ち込んだのが好手で先手に流れが傾いた。取られてしまいそうな飛車だが、9七の角が後手の玉頭をにらんでいるので後手も受け切るのは難しい。実戦は△9九竜としたが▲8八銀△8九竜▲9一飛成△6四香▲7九香で、先手の中段玉が見えにくい形での攻め合いとなり、最後は先手が制した。

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写真:中野伴水

第34期竜王戦七番勝負第2局

 第2局は京都府京都市「総本山仁和寺」にて。第1局とは先後を入れ替えての相掛かりに。先手の豊島が角を細かく動かしてポイントを稼ぎにいくが、藤井は落ち着いて対応。後手番ながら駒を活用して先攻してペースをつかむ。

【第2図は▲2四歩まで】

 図の▲2四歩は勝負手。△8九桂成▲2三歩成△同金▲同飛成に△4五桂が素朴ながら厳しい一手。玉頭を狙われて先手玉は持たない。▲4八玉の早逃げに悠々と△9九成桂が間に合っては分かりやすくなった。藤井が短手数で快勝して2連勝。

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写真:金子光徳

第34期竜王戦七番勝負第3局

 第3局は福島県いわき市「雨情の宿 新つた」にて。藤井が先手で角換わりから相早繰り銀となった。

【第3図は△3七歩成まで】

 後手はと金を作り分かりやすくポイントをあげた局面。先手も何か手を作る必要がある。あっさり▲3七同桂△同角成とし、▲3一銀△3二飛に▲2二角と重く打ち込んだのが好手順だった。▲2二角では単に▲2三飛成も自然だが、△3一飛で駒損が大きい。実戦は▲2二角に大長考で△2四桂と飛車先を受けたが、▲8五飛と転換して先手好調だ。以下も的確な指し回しを見せた藤井が制し、一気の3連勝。

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写真:中野伴水

第34期竜王戦七番勝負第4局

 第4局は山口県宇部市「ANAクラウンプラザホテル宇部」にて。角換わり腰掛け銀から互いに中段に角を打ち合う、バランスの取り方が難しい将棋となった。

【第4図は▲5五銀まで】

 少し前まで将棋ソフトでも見解が分かれる超難解な終盤だったが、ここは後手がチャンスを迎えている。△5六桂が竜王ロードへの一着で、▲同歩△7七歩成▲5七玉△6七と▲4六玉△3四桂で先手玉は寄り筋だ。変化は多いが打ち歩詰め回避の詰みや3五の桂を外しての必至があり、後手の勝ちになっている。

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写真:金子光徳

 時間の少ない中でも正確な指し手を重ねた藤井が制勝。一気の4連勝で竜王奪取を決めた。19歳3ヶ月での四冠は、羽生善治九段の持つ22歳9ヶ月を大きく更新する最年少記録。名人・棋王・王将を擁する渡辺明名人を抜いて、藤井が序列1位にもなった。いよいよ藤井時代が本格的に幕を明け、今後の棋界勢力図はどうなっていくか。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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