棋界最高峰の二人が激突 第71期ALSOK杯王将戦七番勝負展望

棋界最高峰の二人が激突 第71期ALSOK杯王将戦七番勝負展望

ライター: 飛龍  更新: 2022年01月07日

 第71期ALSOK杯王将戦七番勝負は三冠を持つ渡辺明王将(名人・棋王)に、いまや棋界席次1位となる四冠保持の藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖)が挑戦するという、棋界最高位の二人が顔を合わせることになった。この両者で八大タイトル中の7つを占める。これまでタイトル戦での敗退のない藤井竜王の通算7回目のタイトル戦を、4連覇を目指す渡辺王将がいかに迎え撃つか、1月9日から始まる七番勝負を展望したい。

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写真:飛龍

数字上では藤井有利

 両者の対戦成績は藤井竜王8勝、渡辺王将2勝と差が開いている。対戦成績は藤井竜王有利の数字だが、渡辺王将にとっての好材料は、直近の対戦が昨年12月に放映された銀河戦で快勝したこと。このカードの連敗を5で止めた。戦型で見ると全局が相居飛車で、矢倉の4局、相掛かりの3局はすべて藤井竜王が勝ち、一方で角換わりの2局は渡辺王将が勝っている。残る1局、藤井竜王の勝局は初手合わせの際の雁木の将棋だった。また、直近のタイトル戦は、藤井竜王が11月に決着した竜王戦で、4連勝のストレート奪取と最高の結果を残している。一方で渡辺王将は7月決着、藤井竜王とのヒューリック杯棋聖戦で、自身初のストレート敗退となる3連敗だった。それから半年間、渡辺王将としても藤井竜王との再戦はどこかであると想定したうえ、対策を練ってきたことだろう。

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写真:飛龍

注目の戦型選択

 今七番勝負も相居飛車のシリーズになることは間違いなさそうで、そうなると先手を持った側がどの戦型を選ぶのかが焦点になってくる。渡辺王将は半年前のヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局の藤井竜王戦以来、直近の角換わり早繰り銀を除き、相居飛車の先手では矢倉を連採していた。その流れに沿って矢倉の採用があるのか、藤井竜王戦の勝局はいずれも後手だったが、この対戦で初めて先手で角換わりに誘導するのか。あえてこれまで勝ちのない相掛かりを秘策を持って採用するのか、相掛かりで勝勢を築いた将棋もあった。いずれにせよ、戦略家として名高い渡辺王将の戦型選択に注目したい。一方で藤井竜王は後手なら先手の誘導する戦型を受けて立ち、先手を持てば半年以上、角換わりか相掛かりに進めている。対局に臨む際、テーマを持って興味のある戦型を選択しているような印象だ。

直近の実戦は?

 直近の実戦の傾向を見ていこう。渡辺王将の直近10局程度では、ほとんどすべてで先手が勝っているのが目を引く。その中で藤井竜王との銀河戦は後手番での勝利だった。12月24日の最新局、豊島将之九段との竜王戦1組ランキング戦は後手番で持将棋になり、先手番を得た指し直し局で勝利を収めている。11月に対局はつかなかったが、12月は1持将棋局を含めて4局を経験した。先手番では7月の藤井竜王戦以来、負けていない。一方の藤井竜王は、今年度勝率、通算勝率とも8割超えと、相変わらずよく勝っている。棋界最高位に登り詰め、対戦相手もほとんどがトップ棋士である中での高勝率は驚くよりない。11月は8局とハードスケジュールをこなした。6連勝のあと2連敗を喫し、12月は2日に1局を指しただけで、1ヵ月以上も公式戦から遠ざかっている。

コンディション作りが鍵か

 どれだけ優れた力を持っていたとしても、当日、その場でそれが発揮できなければ勝利に結びつかない。前項で触れた実戦数の要素も、実際に影響があるのかどうか。また、将棋という勝負の性質上、精神的コンディションがパフォーマンスに大きく作用する。タイトル戦ではこれまで2回、持ち時間各4時間で1日制のヒューリック杯棋聖戦五番勝負で顔を合わせた。2日制での顔合わせは初となる。百戦錬磨の渡辺王将はもちろん、藤井竜王も2日制自体はこれまでに3回経験してとまどいはないだろうが、両者の顔合わせとなった際にはどうなるのか。タイトル保持数を見ても、ハッキリと最高位に立つ両者という構図も初めてになる。もちろん、寒い季節になり、体調管理も大切だ。感染力の高い新型コロナウイルスの広がりも予断を許さない状況だが、両者の熱い戦いに期待したい。

飛龍

ライター飛龍

日本将棋連盟のネット中継記者として関西将棋会館を中心に2013年11月から活動している。一般社団法人日本フォトロゲイニング協会登録監修者。

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