永瀬、3連覇達成 第69期王座戦五番勝負を振り返る

永瀬、3連覇達成 第69期王座戦五番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年12月17日

 永瀬拓矢王座に木村一基九段が挑戦した第69期王座戦五番勝負。48歳のベテラン木村が13年ぶりの登場。両者が番勝負で戦うのは初めてだ

第69期王座戦五番勝負第1局

 第1局は宮城県仙台市「ホテルメトロポリタン仙台」にて。角換わり腰掛け銀の研究将棋で先手の永瀬がリードを奪うが、木村も離されずに微差で食いついていく。

【第1図は▲9五金まで】

 永瀬らしからぬ読み抜けがあり、ここで後手にチャンスが来ている。△9九角が必殺の一撃で先手玉はたちまち寄り筋に入った。▲8七玉は△6六角成で攻めが切れないので実戦は仕方なく▲9九同玉だが、△9七歩成▲同桂△7七角▲8八香△9五角成で先手は粘るのが難しい格好だ。以下最終盤で形勢が揺れ動いたものの、後手が制した。会心の一手で木村が先勝。

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写真:日本将棋連盟

第69期王座戦五番勝負第2局

 第2局は愛知県蒲郡市「西浦温泉 旬景浪漫 銀波荘」にて。相掛かりから先手の木村がペースをつかむが、終盤に玉の早逃げで攻めを余した後手が逆転する。

【第2図は▲4八玉まで】

 玉の早逃げで自玉の安全を図ったところだが、じっと追い掛ける△6八とが厳しい。▲同角は△7八飛で金を使っては後手玉に迫れなくなる。実戦は▲4五桂打△4四玉▲5三桂成と開き直ったものの、△54八金と打たれて先手玉は詰み筋に入っている。粘り強い指し回しで永瀬が追いつく。

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写真:日本将棋連盟

第69期王座戦五番勝負第3局

 第3局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。相掛かりから激しい展開となるが、攻めを受け止めた木村が徐々にペースをつかんでいく。

【第3図は▲3六銀まで】

 ここで△2七歩がミス。▲5八玉と逃げられて効果が薄く、△2八歩成には▲2四歩のような反撃を与える。実戦は△9四竜と粘りに出たが変調で、最後は▲2六香と歩の裏を突かれて寄せ切られてしまった。第3図では△1四角と4七の地点を狙う方が厳しかったようだ。永瀬が逆転勝ちで2勝1敗とリード。

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写真:日本将棋連盟

第69期王座戦五番勝負第4局

 第4局は兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」にて。相掛かりから後手の永瀬が桂損ながらも動いていった。

【第4図は▲5八銀まで】

 先手玉に対して後手の駒が迫ってはいるが、ここを耐えられると先手の方が楽しみが多い。ここで△6五角が妙手だった。▲7三飛成と竜を作らせてから△3八角成▲同金△8二銀打と強引に飛車を取りにいくのがうまい。飛車を手にすれば先手玉はたちまち寄り筋になる。実戦は長考で▲4一角と勝負手を放ったが、△4二玉から冷静に対応して永瀬が勝ち切った。

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写真:日本将棋連盟

 シリーズを3勝1敗で制した永瀬は3連覇を達成。木村は好局を作りながらも勝ち切れなかった。タイトル戦で敗れる度に今回が最後と思われてきた木村なので、また大舞台へ帰ってくることを期待したい。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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