藤井、竜王も跳ね返す お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負を振り返る

藤井、竜王も跳ね返す お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年12月15日

 藤井聡太王位に豊島将之竜王が挑戦したお~いお茶杯第62期王位戦七番勝負。棋聖戦では渡辺明名人、そして王位戦では豊島竜王と棋界の頂点が揃って挑戦する構図となった。

お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第1局

 第1局は愛知県名古屋市「名古屋能楽堂」にて。相掛かりから藤井の動きに対し的確に対応した豊島がリードを奪う。

【第1図は▲1四同飛まで】

 先手が1筋で香得をしたが、後手も9筋を取り込んでいる。△9七歩成▲同香△9六歩▲同香△9七歩が巧みな攻め。▲9七同角でも▲同桂でも▲9九歩でも△9六香で攻めがつながる。実戦は▲9一香成としたが、△9八歩成で玉の近くにと金を作れたのは大きい。以下も的確な指し回しで豊島が完勝。

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写真:金子光徳

お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第2局

 第2局は北海道旭川市「花月会館」にて。角換わりの相早繰り銀から自陣角を目標にして豊島がペースをつかむが、藤井も激しく攻めて勝負に出る。

【第2図は△3三同銀まで】

 図で▲5九玉は手筋の早逃げだが、△9九金と駒を補充しながら竜の活用を目指したのが好手。▲4五桂に△8九竜▲6九銀△4四銀▲3三歩△2二金と耐えて後手玉はなかなか寄らない。その後△7七桂を間に合わせて後手が制勝した。図では▲9一角成と手を渡しておくのが考えられたようだ。△7八金から△8九竜と攻めても後手は攻め駒が少し不足している。藤井が逆転勝ちで1勝1敗。

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写真:金子光徳

お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第3局

 第3局は兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」にて。角換わり腰掛け銀から難解な押し引きが続く。しかし藤井が一瞬のチャンスを捉えて抜け出した。

【第3図は△2一飛まで】

 2四の成銀取りを受けたくなるところだが、▲8三銀と挟撃を目指したのが好手。△2四飛なら▲7四銀成が厳しい。実戦は△6三銀と受けたが▲3四成銀△2五飛▲4四歩と確実な手で攻め合い勝ちを目指した。以下△8六歩からの反撃も届かず藤井が制勝し、2勝1敗とリード。

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写真:中野伴水

お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第4局

 第4局は佐賀県嬉野市「和多屋別荘」にて行われる予定だったが、豪雨被害により対局場が変更。関西将棋会館で行われることになった。相掛かりから双方自陣角を放ち、難解な手将棋となる。先手は深く囲い、後手はバランス良く構えての持久戦となった。

【第4図は▲6五同歩まで】

 第4図は歩を突き捨てて総攻撃に出たところ。△4五桂▲同角に△6六歩が急所の一撃。▲6八金引△4五銀▲同飛に△5六歩と突いて攻めがつながっている。▲5五飛には△5四飛のぶつけがあり、また▲5六同歩には△6八角成▲同金△6七金で振りほどけないので▲7四桂と攻め合いを見せたが、△5七歩成▲同金△7四銀で後手ペース。以下も好防に絶妙のバランスを見せた藤井が押し切った。これで藤井の3勝1敗となり防衛まであと1勝。

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写真:中野伴水

お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第5局

 第5局は徳島県徳島市「渭水苑」にて。相掛かりから先手が歩得し、うまく局面をまとめきれるかという将棋に。

【第5図は△7五銀まで】

 第5図で▲4四角△同歩の進行も悪くはないが、実戦は強く▲9七桂と対応した。△6六銀▲8五桂△7七銀成▲同金の進行は、飛車打ちに弱い後手が攻め合い負けする。実戦は△8四飛と鬼辛抱したものの、▲7五角と進出した銀を取られてはつらく、以下は先手の快勝となった。

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写真:金子光徳

 藤井は4勝1敗で王位も防衛。竜王、名人と最強の挑戦者を迎えたダブル防衛戦を7勝1敗で乗り切る驚異的な強さを見せつけた。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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