竜王戦七番勝負開幕！　10月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター：渡部壮大　　更新： 2021年12月16日

　いよいよ棋界最高位を懸けた竜王戦七番勝負が開幕しました。勢いに乗る藤井聡太三冠を豊島竜王が止めることはできるでしょうか。また王座戦では永瀬拓矢王座が３連覇を達成しています。

第34期竜王戦七番勝負第1局

【第１図は△１三玉まで】

　第１図は第34期竜王戦七番勝負第１局（▲藤井聡太三冠△豊島将之竜王）。王位戦、叡王戦に続く顔合わせとなった両者。初戦は相掛かりとなりました。後手が押している将棋でしたが、粘り強い指し回しで逆転。ここは先手の勝ちになっています。▲３四銀が「桂頭の銀定跡なり」の手堅い勝ち方。△４五桂さえ消せば先手玉は安全です。実戦は△２二玉と逃げましたが▲３三銀不成△同金▲３四桂打まで後手の投了となりました。

写真：日本将棋連盟

第69期王座戦五番勝負第4局

【第２図は▲５六角まで】

　第２図は第69期王座戦五番勝負第４局（▲木村一基九段△永瀬拓矢王座）。相掛かりから先手が桂得に成功しましたが、後手がうまく手を作り逆転。▲５六角は詰めろ飛車取りですが、飛車にはヒモが付いているので問題ありません。受け方は色々ありますが△２二玉が「玉の早逃げ八手の得」で、▲３四馬に△２三金打とガッチリ受けて後手陣は鉄壁です。第２局以降巧みな玉さばきを見せた永瀬王座が３勝１敗で防衛を果たしました。

写真：日本将棋連盟

第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第3局

【第３図は△５七金まで】

　第３図は第１期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第３局（▲西山朋佳女流三冠△渡部愛女流三段）。中飛車対居飛車穴熊の終盤戦です。ここで▲４二金と取るのは、次に後手玉に王手が掛からないためいけません。▲３二金打が「終盤は駒の損得より速度」の寄せで、△同香▲同角成△３一金▲５一竜と駒が入れば詰む形をキープすることが大切です。以下は穴熊を寄せ切って西山女流三冠が３連勝としました。

写真：日本将棋連盟

第3期大成建設杯清麗戦五番勝負第2局

【第４図は△６四歩まで】

　第４図は第３期大成建設杯清麗戦五番勝負第２局（▲加藤桃子女流三段△里見香奈清麗）。ここでは▲５六銀と引くのも有力ですが、実戦は▲５四銀と積極的に進めます。△５二銀で銀ばさみの格好ですが、「桂は控えて打て」の▲５六桂が攻めをつなぐ好手。次の▲４四桂が意外に受けにくく、△４一銀と引きましたが少し悔しい辛抱です。▲４六飛と活用して先手ペースとなりました。

写真：日本将棋連盟

第43期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第1局

【第５図は▲１五同歩まで】

　第５図は第43期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第１局（▲西山朋佳女流王将△里見香奈女流四冠）。相振り飛車から先攻した後手ペースの戦いです。１筋で交換した香を据える△４二香が「下段の香に力あり」でした。数を足すなら▲４八香ですが、玉が狭くなって非常に危険です。実戦は▲２六歩と強く受けにいきましたが、△４六銀▲２五歩△４七銀不成▲２四歩△３六銀成と進み、下段の香が存分に威力を発揮しています。挑戦者が快勝で初戦を制しました。

写真：日本将棋連盟（写真は第2局より）

第52期新人王戦決勝三番勝負第2局

【第６図は▲８八玉まで】

　第６図は第52期新人王戦決勝三番勝負第２局（▲古賀悠聖四段△伊藤匠四段）。第１局を伊藤四段が勝って迎えた第２局です。△８六歩が「開戦は歩の突き捨てから」の通り総攻撃の合図です。飛車が８筋にいないため、流れが緩やかなうちに突き捨てておくのが大切。▲８六同歩なら△８五歩の継ぎ歩や△８七歩とたたく味があります。実戦は▲８六同銀でしたが、△３五角▲２八飛△４六角から大決戦となり、薄くなった６筋から攻め込んだ後手が制しています。伊藤四段は２連勝で新人王に輝きました。

写真：銀杏