ダブル防衛戦となった藤井。6月下旬の注目対局を格言で振り返る

ダブル防衛戦となった藤井。6月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年08月13日

 ダブル防衛戦に加え、叡王戦で挑戦権を手にした藤井聡太王位・棋聖。この夏は複数冠同士の熱いタイトル戦が続きます。

お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第1局

【第1図は▲9六同香まで】

 第1図はお~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第1局(▲藤井聡太王位△豊島将之竜王)。相掛かりの空中戦から双方端で手を作っていきました。ここで△9六同飛は▲9七香、△9六同香は▲9七歩で受けられてしまいますが、△9七歩が「敵の打ちたいところに打て」の好手。▲同桂、▲9九歩のいずれも△9六香で走った香が安定します。実戦は▲9一香成としましたが、△9八歩成で攻めがつながりました。

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検分の模様 撮影:金子光徳

第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

【第2図は△5五同金まで】

 第2図は第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局(▲藤井聡太棋聖△渡辺明名人)。相掛かりから大熱戦の将棋となりましたが、じりじりと先手が抜け出していきました。勝ち方は色々ありますが、▲5七歩△4七銀成▲4八銀が「遊び駒は活用せよ」の気持ち良い決め方。以下△6二飛▲6七歩△4八成銀▲同飛△4六香に▲3一銀から即詰みに打ち取りました。

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検分の模様 撮影:中野伴水

第6期叡王戦挑戦者決定戦

【第3図は▲6八銀まで】

 第3図は第6期叡王戦挑戦者決定戦(▲斎藤慎太郎八段△藤井聡太王位・棋聖)。角換わりから激戦の終盤戦ですが、後手勝勢となったところです。ここでは△5八金▲7九玉△6八馬▲同金△同金▲同玉△5七銀以下、長手数の詰みもありましたがすでに後手は一分将棋。△8八銀が「長い詰みより短い必至」の決め手で、先手の投了となりました。藤井王位・棋聖は豊島叡王と立場を代えてのダブルタイトル戦です。

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撮影:文

第34期竜王戦決勝トーナメント

【第4図は▲9六香打まで】

 第4図は第34期竜王戦決勝トーナメント(▲折田翔吾四段△青嶋未来六段)。竜王戦決勝トーナメントの開幕戦です。駒得の後手が優勢の局面ですが、先手はまだ堅陣なので方針を誤ると勝負に持ち込まれる可能性があります。△7三玉が端の危険から遠ざかる「玉の早逃げ八手の得」です。▲9四歩△同香▲同香に△6四玉ともう一つ早逃げして、後手玉は寄らない格好になりました。

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撮影:吟

第69期王座戦挑戦者決定トーナメント

【第5図は▲6五同銀まで】

 第5図は第69期王座戦挑戦者決定トーナメント(▲佐藤康光九段△飯島栄治八段)。阪田流向かい飛車から迎えた中盤戦です。ここから△6一飛▲6八飛が「戦いの起こった筋に飛車を振れ」の戦い方。8筋よりも6筋の戦いに備えるべきです。以下△6四歩▲5六銀に△1四歩と端に戦線を拡大して難解な形勢です。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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