チーム永瀬VSチーム広瀬 第4回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第三試合振り返り~

チーム永瀬VSチーム広瀬 第4回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第三試合振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2021年06月30日

 第4回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第三試合、チーム永瀬(永瀬拓矢王座、増田康宏六段、屋敷伸之九段)とチーム広瀬(広瀬章人八段、丸山忠久九段、北浜健介八段)は6月26日(土)に放映、オーダーから結果まで目が離せない展開になった。

 まずはチーム永瀬がスタートダッシュを決める。第1局から屋敷がまさかの3連投で、北浜と丸山に勝ち、広瀬に敗れた。広瀬が予想したように、勝ったときは勢い重視で出場し続ける方針だったのだろう。

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第2局を見て「キレッキレですね。3連投ですよ。文句なしで」と永瀬

 そして第4局に永瀬が丸山、第5局に増田が北浜を破り、早くもリーチを掛ける。チーム勝利が目前かと思いきや、ここから激戦となった。

【第7局 永瀬ー広瀬】

 チーム広瀬は追い詰められたものの、第6局の増田-広瀬戦は広瀬が意表の三間飛車穴熊で快勝する。昔、奨励会時代に蒲田将棋クラブでアマ強豪を相手に腕を磨いて身に着けた戦法を突然ぶつけたのだ。増田がとっさに対応できなかったのも無理はない。

 第7局は永瀬-広瀬のリーダー対決。チーム永瀬は丸山を本命視していたようだが、チーム広瀬は丸山の発案で勝率の高い順に出場して連勝するプランに懸けた。

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第7局▲広瀬章人八段VS△永瀬拓矢王座戦

 戦型は先手の矢倉に後手の急戦となった。広瀬は時間を温存するために序盤を飛ばしたのものの、かなりの作戦負けになってしまう。ところが勝負手を連発して、いつの間にか逆転に成功した。最後は受けが難しくなった永瀬の王手ラッシュを的確に見切る。

【第1図は△7七同銀不成まで】

 第1図は金を取られたところで、▲7七同馬は△7八金打▲同馬△同金▲同玉に△5六角から桂を抜かれてしまう。怖いようでも▲7七同玉が正解で、△7六歩から王手は続くも▲同玉で詰まない。馬の守りに加えて、飛車の横利きが大きい。最後は5五まで玉が脱出したところで、永瀬の投了となった。

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第7局の広瀬勝ちに「おお、スタンバイだね」「ここはガジっと」と丸山は北浜に声をかける

【第8局 増田-北浜】

 第8局は増田-北浜。第5局とは先後が入れ替わり、後手の北浜が角交換振り飛車を採用する。二転三転し、最後は増田勝ちかと思いきや、ドラマが待っていた。

【第2図は▲7二金まで】

 第2図は▲7二金と詰めろをかけたところ。北浜は△4五香と王手をかけると、時間に追われた増田は▲4八歩と合駒する。これが痛恨の頓死で、△5八成銀と指す北浜の指先には力がこもっていた。▲5八同玉は△6七馬、▲3九玉は△4八成銀▲同飛△同香成▲同玉△3八飛から詰み。

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第8局の▲増田康宏六段VS△北浜健介八段

 △5八成銀に増田は投了を告げる。時間にすれば~秒ぐらいの出来事で、解説の千葉幸生七段も興奮してスポーツ実況のようだった。

 「(△4五香を見て)いつの間にか香をゲットしていたのか。あ、ギリギリだ。(△5八成銀に)あ、いまいい手つきだった! いい手つきだったよ、これ。ああ、そうか。狙っていましたねぇ」

 △4五香には▲4七歩と中合いすれば詰みはなかった。フィッシャールールならではの大逆転劇といえるだろう。

【第9局 永瀬-丸山】

 第9局は永瀬-丸山。最終局のため改めて振り駒が行われ、永瀬の先手が決まった。第4局と先後も同じで、やはり丸山が十八番の一手損角換わりに出た。丸山が機敏な仕掛けでリードを奪うも、永瀬が粘り強い指し回しで決め手を与えない。やがて丸山は時間切迫で指し手が乱れ、永瀬がペースをつかむ。

【第3図は△5四歩まで】

 第3図は△5四歩と馬の利きを遮って銀取りを受けたが、▲8六銀△同歩▲3五銀△5三銀▲7七玉で上部脱出の楽しみが出てきた。実戦は以下△3七馬▲4九飛△8二馬▲5五歩△8四桂に▲5四歩で攻守が入れ替わり、永瀬が寄せきった。

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第9局▲永瀬拓矢王座VS△丸山忠久九段戦

 終局後のインタビューに、永瀬は第7局の広瀬の粘り強さに学んだと語っている。後日、丸山はツイッターで「最終戦、寄せにいける場面が何度もありましたが、1局目で寄せそこなったこともあり、踏み込みに欠いてしまいました。広瀬リーダー、北浜八段が頑張ってくれただけに残念です。本戦では立て直していけたらと思います」と反省の弁を述べた。

 チーム永瀬は2勝0敗のプラス5で1位通過、チーム広瀬が1勝1敗のプラス2で2位通過となった。本戦でも活躍を期待したい。

【総合成績】

第1局 屋敷〇-●北浜
第2局 屋敷〇-●丸山
第3局 屋敷●-〇広瀬
第4局 永瀬〇-●丸山
第5局 増田〇-●北浜
第6局 増田●-〇広瀬
第7局 永瀬●-〇広瀬
第8局 増田●-〇北浜
第9局 永瀬〇-●丸山

総合 川崎家 5勝 ― 4勝 早稲田

【個人成績】

永瀬王座 2-1
増田六段 1-2
屋敷九段 2-1
広瀬八段 3-0
丸山九段 0-3
北浜八段 1-2

次回は予選Eリーグ第一試合、チーム斎藤とチームエントリーが対戦。7月3日(土)19時からの放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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