チーム永瀬VSチーム天彦 第4回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第二試合振り返り~

チーム永瀬VSチーム天彦 第4回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第二試合振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2021年06月22日

 第4回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第二試合、チーム永瀬(永瀬拓矢王座、増田康宏六段、屋敷伸之九段)とチーム天彦(佐藤天彦九段、鈴木大介九段、古賀悠聖四段)は6月19日(土)に放映された。

 第1局は永瀬-鈴木戦。オーダーが発表され、司会の室谷由紀女流三段に感想を聞かれた永瀬が「予想できていましたので、これからも予想を当てていきたいなと思います」と答えると、チーム天彦は「怖い」「怖いな~」と苦笑い。鈴木は「(四段の永瀬に将棋を教えた)お返しがあるとしたらここだと思うんで。にゃんぱす~、よろしくね」と永瀬に笑顔で手を振った。しかし、盤上の永瀬の指し手は緩まず、居飛車穴熊で新手を放って幸先のよいスタートを決めている。

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第1局の作戦会議で、永瀬に闘志を燃やして「リーダー、やってやりますよ」と鈴木。古賀に飛車を振る場所を委ね、指定通りに四間飛車にするも実らなかった

【第2局 屋敷ー古賀】

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第2局▲屋敷VS△古賀

 第2局は屋敷-古賀戦で、屋敷はABEMAトーナメントに初登場。古賀の将棋はチェックしているものの、初対面だったそうだ。

 戦型は相雁木になり、古賀が中盤でリードを奪って終盤を迎える。

【第1図は▲8八玉まで】

 第1図で△5七桂成と成り捨てたのが決め手で、▲同飛は△6八馬が飛車取りと△7九角の両狙いになる。屋敷は飛車取りを手抜いて▲4四歩から攻め続けるも、古賀が押し切ってABEMAトーナメントで初勝利を挙げた。

【第4局 永瀬-佐藤】

 第3局は増田が古賀に逆転勝ちする。終局後のインタビューに「負けたらリーダーが怒るなと思ったので、何とか勝とうと思いました」と答えたのが印象的だった。和気あいあいとした控室のチーム天彦に対し、チーム永瀬の空気はピリッとしている。張り詰めた空気から2連覇への意気込みが伝わってくる。

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第4局▲永瀬VS△佐藤

 第4局は永瀬と佐藤のリーダー対決。作戦会議で「後手番かぁ......。指す戦法がないっす」とぼやいた佐藤は、三間飛車から穴熊に組んだ。居飛車党ながら、昨年秋から振り飛車もレパートリーに加えている。

 永瀬が駒得になり、佐藤が必死に粘って第2図の局面を迎えた。

【第2図は△8七角成まで】

 △8七角成と銀を取ったのに対し、▲8八金打△8六馬▲7七銀と埋めるのが好手。馬さえ追い払えば、ゆっくりした攻めが間に合う。佐藤は△8七桂▲同金△同馬とはがすも、▲8八金打と堅陣を再構築されては手が出せない。永瀬は自身の著作『負けない将棋』を思わせるような指し回しで勝勢になった。

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第4局の▲永瀬VS△佐藤戦を検討するチーム永瀬の控室

【第6局 増田-佐藤】

 第5の屋敷-鈴木戦は屋敷勝ちで、チーム永瀬が団体戦勝利にあとひとつに迫る。追い詰められたチーム天彦は第6局にリーダーの佐藤が登場した。チーム永瀬のオーダーは増田。実は佐藤-増田のカードは、第3回AbemaTVトーナメントのチーム天彦とチーム永瀬の戦いで3局!も指している。結果は佐藤の2勝1敗ながら、増田の1勝はチーム勝利を決める大きな白星だった。

増田との対戦が発表されると、チーム天彦の作戦会議は盛り上がった。

鈴木「念願かないましたね」

佐藤「そうですね(笑)。ようやく増田君と会うことができまして」

鈴木「おめでとうございます」

佐藤「今年も(笑)。やっぱり増田くんと指さないと、ABEMAトーナメントは終われないですよね。そして恒例の後手番ということで、だいたい(作戦は)出し尽くしている。まあ何かします(笑)」

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第6局▲増田VS△佐藤

 実戦は増田の得意戦法、相掛かりを佐藤が受けて立った。優勢になった増田は佐藤の粘りに手を焼き、逆転しそうになるも踏みとどまる。

【第3図は△3一桂まで】

 △3一桂に▲3二金△1三玉▲6四歩が勝着で、馬の利きを遮って入玉ルートを確保しながら、▲3一金から▲2五桂打からの詰みを見ている。実戦もその順が実現し、第3回に続いてまたも増田が勝利投手になった。

 増田は2020年度の第79期順位戦C級1組を突破できた要因を「第3回AbemaTVトーナメントの華やかな舞台に出場できて、将棋のモチベーションが維持できた」と語っている。第4回でも大暴れしてくれそうだ。

 チーム天彦はリーグ成績が0勝2敗の得失点差マイナス7になり、予選敗退が決まった。佐藤は次のように反省の弁を述べている。

 「僕自身2連敗で結果を出せなかったというのは大きいですし、ほかのメンバーも内容的に競ってる将棋が多かったと思うんですけれども、あと一歩、結果につながる何かが出なかったというのが敗退という事になったのかなと。そこはもちろん実力という面もありますし、流れを作り切れなかったというところも大きくあるのかなと思います」

 チーム永瀬は1勝0敗の得失点差プラス4で本戦進出が決まり、同じく予選突破となったチーム広瀬(1勝0敗・プラス3)と1位通過を懸けて対戦する。

【総合成績】

第1局 永瀬〇-●鈴木
第2局 屋敷●-〇古賀
第3局 増田〇-●古賀
第4局 永瀬〇-●佐藤
第5局 屋敷〇-●鈴木
第6局 増田〇-●佐藤

総合 川崎家 5勝 ― 1勝 にゃんぱす~

【個人成績】

永瀬王座 2-0
増田六段 2-0
屋敷九段 1-1
佐藤九段 0-2
鈴木九段 0-2
古賀四段 1-1

次回は予選Dリーグ第三試合のチーム永瀬「川崎家」とチーム広瀬「早稲田」が対戦、6月26日(土)19:00からの放映をどうぞお楽しみに。

ABEMAトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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