渡辺、タイトル獲得通算歴代4位に 第46期棋王戦五番勝負を振り返る

渡辺、タイトル獲得通算歴代4位に 第46期棋王戦五番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年05月12日

 渡辺明棋王に糸谷哲郎八段が挑戦した第46期棋王戦五番勝負。糸谷は久しぶりのタイトル戦登場だ。

第46期棋王戦五番勝負第1局

 第1局は栃木県宇都宮市「宇都宮グランドホテル」にて開幕予定だったが、緊急事態宣言が出されたためホテルが休業。予定を変更して東京・将棋会館にて行われた。後手の雁木に対し、先手は右四間に構える。先手の攻めを受け止めた後手が逆転。チャンスを迎えた。

【第1図は▲7五同歩まで】

ここから△5三玉▲3二飛△6六角▲同金△4四玉が糸谷らしい指し回し。中段玉を安定させて寄らない格好を作り上げた。以下は反撃に転じ、先手玉を寄せ切っている。糸谷が後手番で大きな先勝。

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写真:玉響

第46期棋王戦五番勝負第2局

 第2局は石川県金沢市「北國新聞会館」にて。角換わりから後手が早繰り銀、先手は1筋の位を取って右玉に構えたが......。

【第2図は▲4八玉まで】

△1四歩の逆襲が厳しい反撃。▲同歩に△1七歩と垂らし、▲同香なら△1八角と打ち込み、▲2六飛に△1六歩▲同香△1七銀の筋があり手になっている。実戦は▲2七銀と辛抱したが△1四香▲1六歩に△1八銀と打ち込んで攻めが続く。取った位を逆用されてはつらく、後手が快勝した。

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写真:生姜

第46期棋王戦五番勝負第3局

 第3局は新潟県新潟市「新潟グランドホテル」にて。横歩取りから糸谷に序盤ミスがあり、あっさり香得した渡辺が優勢になる。そのまま押し切るかと思われたが、中段玉で怪しく粘り形勢は徐々に怪しくなっていった。

【第3図は△6六銀まで】

後手が追い込み、ついに先手玉に詰めろが掛かっている。だが、▲5三飛がギリギリで踏みとどまった一手。△6三歩と使わせて先手玉の詰めろが消え、▲9五桂△8二玉▲7三歩と反撃して先手の一手勝ちだ。冷や汗をかいた渡辺だが何とか逃げ切って2勝1敗とリード。

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写真:琵琶

第46期棋王戦五番勝負第4局

 第4局は東京都渋谷区「東郷神社」にて。角換わりから第2局同様、渡辺は急戦を目指し、糸谷は居玉のまま両端を突き越して攻めを待つ。

【第4図は▲5四銀まで】

後手は堅陣で、押さえ込まれさえしなければ形勢をリードできる。いま5四の歩を取られたところだが、すかさず△5六歩がうるさい攻め。▲同歩なら△3九角~△6六角成がある。実戦は▲6八玉と顔面受けだが、△8八歩▲同金を利かし、やはり△3九角と攻めた。▲3八飛なら△5七歩成▲同金△同角成▲同玉△6四金がある。実戦は△3九角に▲2七飛の辛抱だったが、△5七歩成▲同金△4八角成から後手が確実な攻めをつなぎ、そのまま押し切った。渡辺が貫録を見せて3勝1敗で9連覇を果たす。
勝った渡辺は王将戦に続く防衛でタイトル獲得通算28期に。谷川浩司九段を抜き、歴代単独4位となった。

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写真:常盤秀樹

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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