チーム康光VSチーム糸谷 第4回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第二試合振り返り~

チーム康光VSチーム糸谷 第4回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第二試合振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2021年05月11日

 5月8日(土)に放映された、第4回ABEMAトーナメント予選B組2回戦のチーム康光「シン・レジェンド」(佐藤康光九段、森内俊之九段、谷川浩司九段)とチーム糸谷「FREESTYLE」(糸谷哲郎八段、山崎隆之八段、服部慎一郎四段)の戦いを振り返る。

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チーム康光「シン・レジェンド」

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チーム糸谷「FREESTYLE」

 振り駒の結果、第1局の先手番はチーム糸谷に決まった。まずは第5局までの結果をまとめよう。

第1局 谷川◯-●山崎
第2局 森内●-〇糸谷
第3局 佐藤〇-●服部
第4局 谷川●-〇山崎
第5局 森内〇-●服部

 第1局は山崎が追い込むも金銀の打ち合いで千日手に。どうやら山崎は千日手模様で時間を稼いでから寄せに出るつもりだったようで、記録係から千日手成立を告げられると「あ、そうなの」と頭を抱えた。指し直しは谷川が制し、幸先のよいスタートを決めた。
一進一退の攻防が続き、第5局を終えてチーム康光が3勝2敗とリードする。第6局のオーダーは佐藤-山崎と個性派対決になった。

【第6局 佐藤ー山崎】

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佐藤の矢倉に山崎が急戦に出る。

【第1図は▲6四銀まで】

 第1図は終盤の入り口。後手は4筋で駒を取れるのに加えて、6筋と7筋で歩を使える。豊富な組み合わせに目移りし、早指しではかえって悩ましい局面だ。実戦は△7七歩▲同桂△4八角成▲同銀△1三角と迫った。銀を取らずに桂を残したまま端に角をのぞいたのが山崎流の勝負術で、駒の損得にとらわれず先手玉へのプレッシャーを優先している。佐藤は▲7五角の攻防手を放ったが、△8五桂▲5七銀(代えて▲8五同桂は△7七歩▲同金△7九飛を狙われる)△7七桂成▲同金△4一玉で先手が容易ではない。△8五桂や△6八歩、△8九飛の追い込みが残っている。佐藤は▲4六桂と受けるも、△8五桂からうまく手をつないだ山崎が押し切った。

 山崎はタイに戻し、第1局の敗戦を帳消しにする勝利だった。しかし、局後に控室で糸谷は「今回の反省は?」と手厳しい。第1図では△6三歩と攻めを催促する組み立てで指したほうがよかったという。遠慮のない指摘にチーム糸谷の結束の強さを見た。

【第7局 森内ー服部】

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第6局までチーム康光は谷川→森内→佐藤の順番で出場していたが、第6局は「後手番のほうが戦いやすい」と森内が志願した。オーダーが発表されると、チーム糸谷は「おっと」「予想が外れた」と声を上げる。恐らく谷川を予想していたのだろう。チーム糸谷からは服部が出て、残る2戦は糸谷で確定した。
森内-服部は2回目。1局目の角換わりとは違って相掛かりに進む。服部がリードを奪うも、森内が粘って逆転に成功する。

【第2図は▲7二銀まで】

 第2図▲7二銀の打ち込みが厳しいようだが、△4一玉▲7一銀不成△4二飛でリードを拡大した。残り3秒になるまで考えて指した玉の早逃げが好手で、△4二飛まで進むと先手の馬と銀が空振りになった格好だ。服部は△4二飛に▲7四馬と攻め合うも、△8七歩成が痛い。▲同金は後の▲7五馬に△7八飛が王手馬取りになってしまうので▲7九金と引いたが、△3一玉とさらに早逃げして森内が押し切った。佐藤は「見事な将棋で、新人君に厳しい洗礼を」と森内は讃えた。服部は控室で「自分の得意な展開になってと思ったんですけど」「我ながらうまくやったと思ったんですけど」とぼやいている。

【第8局 谷川-糸谷】

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あと1勝に迫ったチーム康光は、先手番の第8局を谷川に託した。
糸谷は雁木系に進めるも、谷川に手厚い陣形に組まれて苦戦に陥る。

【第3図は▲7六銀まで】

 第3図は後手桂損で、△6三金が致命傷になった。谷川は盤をのぞき込み、▲7五桂と打つ。糸谷は1分近く手を止めて、うっかりは明白だった。△5二銀としたが、▲6三桂成△同銀▲8三金△7一飛▲7三金△同飛▲8二角でさらに駒損が拡大してしまう。さすがにこれでは糸谷の剛腕も発揮できず、谷川が5勝目を挙げた。糸谷は投了を告げたあとに「失礼しました」と苦笑した。
局後のインタビューに、谷川は次のように答えている。
「去年から色々何局か戦いましたけれどもこのシリーズが一番、3人の力を合わせて勝てたかなという感じがしますね。これまでは森内俊之九段に頼りっきりでしたので、今回は全員で勝てた勝利かなという感じがします」
勝ちと負けを繰り返す接戦のなか、谷川はリーダーの糸谷を破ってチーム勝利を決め、貫録を示した。「レジェンド」から「シン・レジェンド」にパワーアップした姿を実際に盤上に示したといえよう。
チーム康光は1勝0敗で得失点差をプラス2にし、0勝1敗でマイナス3のチーム菅井と予選突破を懸けて戦う。チーム糸谷は敗れたものの、予選を1勝1敗で得失点差をプラス1で終えて、突破が決まった。

【総合成績】

第1局 谷川◯-●山崎
第2局 森内●-〇糸谷
第3局 佐藤〇-●服部
第4局 谷川●-〇山崎
第5局 森内〇-●服部
第6局 佐藤●-〇山崎
第7局 森内〇-●服部
第8局 谷川〇-●糸谷
総合  5勝 ― 3勝

【個人成績】

佐藤九段 1-1
森内九段 2-1
谷川九段 2-1
糸谷八段 1-1
山崎八段 2-1
服部四段 0-3

ABEMAトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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