チーム糸谷VSチーム菅井 第4回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第一試合~

チーム糸谷VSチーム菅井 第4回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第一試合~

ライター: 紋蛇  更新: 2021年05月06日

 第4回ABEMAトーナメントの予選B組1回戦、チーム糸谷「FREESTYLE」(糸谷哲郎八段、山崎隆之八段、服部慎一郎四段)とチーム菅井「一刀流」(菅井竜也八段、郷田真隆九段、深浦康市九段)の戦いは、5月1日に放映された。

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チーム糸谷「FREESTYLE」のメンバー

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チーム菅井「一刀流」のメンバー

 第1局はチーム糸谷の先手が決まり、トップバッターは山崎と深浦で山崎勝ち。第2局は服部と菅井の顔合わせで、菅井が制した。第3局は山崎-菅井戦。エンジンがかかってきたか、ともに早くも2局目の登場である。

【第3局 山崎ー菅井】

 戦型は菅井の中飛車穴熊に山崎が端を狙う独創的な駒組みを披露する。菅井が駒損の代償に玉頭を攻めて、第1図の局面を迎えた。

【第1図は▲5三とまで】

 4三にいたと金を5三に寄ったところで、△7六歩なら▲6三との飛車取りから7筋の攻めを緩和する。解説の石井健太郎六段は▲5三とを「勇者」と評し、「負けても取り込みますね」と△7六歩▲6三と△7七歩成▲同金△8九角を示唆していた。
実戦で指されたのは△5二金で、石井はすぐさま「かっこいい手ですね」と声を上げた。▲同とならと金が遠ざかり、▲6三とが消えてより安全に攻めに専念できる。それは金を取られたというよりも、取られそうだった金を働かせた格好だ。山崎は△5二金に▲5五飛△7六歩▲7三歩△同桂▲6三と△同金▲9三歩と勝負手を放ったが、△9二歩から冷静に受けた菅井がねじり合いを制す。力でねじ伏せる指し回しに、控室で見守っていた郷田と深浦は「いやー、強い」とのけぞり、笑顔を見せた。
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菅井竜也八段VS山崎隆之八段の終局後「いやー強い」と感嘆した深浦康市九段と郷田真隆九段

【第5局 服部ー深浦】

 第4局の糸谷-郷田戦は糸谷勝ちで、2勝2敗のタイに戻す。長考派の郷田が序盤から飛ばしに飛ばし、時間のない終盤では駒台の持ち駒が乱れたままだった。終局後のインタビューでそのことを問われると、「なりふり構ってられないところがあって」と苦笑している。

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服部慎一郎四段VS深浦康市九段

第5局は服部-深浦戦。先手の矢倉に深浦が急戦でリードを奪って優勢になるも、服部が終盤の粘りで逆転につなげた。第2図は▲5九銀と4八の銀を引いて、飛車の横利きを通したところ。

【第2図は▲5九銀まで】

 △5八歩▲同飛△5七金で絶体絶命のようだが、▲7八飛で服部は耐えたと感じたという。これには対戦相手の深浦だけでなく、両チームの控室も驚きだったようだ。△7八同馬▲同玉△6七金打▲8七玉△7九飛と追撃されるものの、▲8八銀△7八飛成▲9七玉△7七金▲7九銀打!から見事にしのぐ。糸谷は「素晴らしい。チームの士気を上げる勝利」と讃えた。
戻って、図では△8七金なら受けにくかった。▲7九銀なら△7七金で△5七桂を狙えばよい。

【第7局 糸谷-菅井】

 第6局の山崎-郷田戦は、山崎が辛抱強い指し回しでチーム4勝目を挙げる。

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第7局 糸谷哲郎八段VS菅井竜也八段

 チーム勝利にあとひとつに迫った第7局は、糸谷-菅井のリーダー同士の対戦となった。作戦会議で糸谷は「ここで負けても余裕があるのはうれしい。気楽にいってきます」は話し、第3局の山崎-菅井戦で指された山崎流の作戦を真似た。指し慣れない戦法のはずだが、糸谷がうまい指し回しでバランスを保ち、終盤で抜け出すことに成功する。第3図で▲9四歩が詰めろでは勝負あった。

【第3図は△5六金まで】

 △2九飛成は▲9三歩成△同桂▲同香成△同玉▲8五桂△9二玉▲9三銀△8一玉▲8二銀引成△同金▲7一金までの詰み。菅井は△6七歩▲7九玉△2九飛成と迫るも、▲8八玉で続かない。最後は糸谷が長手数の詰みに打ち取り、チームの勝利を決めた。

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糸谷菅井の終局直後。糸谷八段の勝利を喜ぶ山崎と服部

 全体を振り返ってみると、チーム糸谷は文字通りの「FREESTYLE」で、独特な序盤作戦と早指しで「一刀流」を翻弄した印象だ。チーム菅井は郷田と深浦が2連敗と調子が出なかった。チーム康光戦での巻き返しを期待したい。

【総合成績】

第1局 山崎○-●深浦
第2局 服部●-○菅井
第3局 山崎●-○菅井
第4局 糸谷○-●郷田
第5局 服部○-●深浦
第6局 山崎◯-●郷田
第7局 糸谷○-●菅井
総合  5勝-2勝

【個人成績】

糸谷八段 2-0
山崎八段 2-1
服部四段 1-1
菅井八段 2-1
郷田九段 0-2
深浦九段 0-2

ABEMAトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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