王将戦は決着へ 3月上旬の注目対局を格言で振り返る

王将戦は決着へ 3月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年05月12日

 王将戦七番勝負は永瀬拓矢王座が反撃しましたが、悪い流れを断ち切り渡辺明王将が4勝2敗で防衛を果たしました。また、女流王位戦では好調の山根ことみ女流二段がタイトル初挑戦を決めています。

第70期王将戦七番勝負第5局

第1図は第70期王将戦七番勝負第5局(▲渡辺明王将△永瀬拓矢王座)

【第1図は▲5八金まで】

 角換わりから先手が桂を跳ねて速攻を掛けました。左辺が壁になっている分、先手が苦戦です。△5五桂が妙手。▲同飛なら△4七成香が厳しい手になります。実戦は▲3五桂と攻め合いましたが、本当なら▲5五桂と打ちたいところ。△5五桂は「敵の打ちたいところへ打て」の好防手になっているのが分かります。妙手で突き放した永瀬王座が2勝目をあげました。

20210511_playback0301_01.jpg
写真:武蔵

第70期王将戦七番勝負第6局

第2図は第70期王将戦七番勝負第6局(▲渡辺王将△永瀬王座)

【第2図は△6五角成まで】
20210511_playback0301_07.jpg

 本局は千日手となり、指し直しとなりました。のんびりしていると△7四馬から陣形を整備されて指しにくくなっています。「3歩持ったら端に手あり」で、▲1五歩と動いていきました。△同歩▲1二歩△同香▲1三歩に△同香なら▲1四歩△2三歩▲2六飛△1四香▲1二角で攻めが続きます。実戦は▲1三歩に△2三金と力強く受けて熱戦が続きましたが、うまく1~2筋で手を作った先手が制勝しています。これで渡辺王将の4勝2敗となり、通算5期目の王将獲得。タイトル通算も27期で谷川浩司九段と並びました。

20210511_playback0301_02.jpg
写真:日本将棋連盟

第46期棋王戦五番勝負第3局

第3図は第46期棋王戦五番勝負第3局(▲渡辺明棋王△糸谷哲郎八段)

【第3図は△3二歩まで】

 横歩取りから早々に先手がリードを奪います。▲1六角が玉をにらんでの厳しい攻めで「角筋は受けにくし」です。後手は受けに適した駒がありません。仕方なく△4二玉ですが攻めに近付いてつらく、▲2五桂から攻めが続きます。終盤はあわや、という局面もありましたが先手が逃げ切りました。

20210511_playback0301_03.jpg
写真:琵琶

第14期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦

第4図は第14期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦(▲塚田恵梨花女流初段△伊藤沙恵女流三段)

【第4図は▲4五歩まで】

 後手がどこから動くかという局面ですが、△3五歩がうるさい攻め。▲4七金と受けますが、△8六歩▲7八金△3六歩▲同金△4七角で「金は斜めに誘え」の通り死角を突くことができました。以下▲2六飛に△6二飛と駒を入手しにいって後手が指せる形勢です。その後も押し切り、伊藤女流三段がマイナビ女子オープンでは初の挑戦権を獲得しました。

20210511_playback0301_04.jpg
写真:玉響

第32期女流王位戦挑戦者決定戦

第5図は第32期女流王位戦挑戦者決定戦(▲伊藤沙恵女流三段△山根ことみ女流二段)

【第5図は▲6四歩まで】

 相振り飛車から形勢が揺れ動く熱戦となりましたが、図は先手優勢。後手はどう粘るかですが、△8三玉が「中段玉寄せにくし」です。以下▲1一竜△6四金▲6六香△5五金▲同歩に△9五歩と逃げ道を開いて後手玉は寄りにくい形になりました。以下入玉を目指した先手玉を捕まえ、最後は後手が制しています。山根女流二段が大舞台に初登場です。

20210511_playback0301_05.jpg
写真:常盤秀樹

第79期順位戦B級1組最終戦

第79期順位戦B級1組最終戦(▲永瀬拓矢王座△近藤誠也七段)。

【第6図は△2六歩まで】

 入玉模様の粘りをされています。△2六歩は▲2六角を消す「敵の打ちたいところに打て」の受けです。図から▲3九馬△2八金に▲1六飛が「玉は下段に落とせ」の寄せ。△同玉▲2八馬△1七銀に▲2五角と打ち、△同玉▲1七馬△2四玉▲2二飛と、大駒捨て2連発で玉を押し返して寄せ切っています。勝った永瀬王座はA級昇級を決めました。

20210511_playback0301_06.jpg
写真:牛蒡

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています