決戦!渡辺明棋王VS糸谷哲郎八段 第46期棋王戦五番勝負展望

決戦!渡辺明棋王VS糸谷哲郎八段 第46期棋王戦五番勝負展望

ライター: 相崎修司  更新: 2021年02月05日

 第46期棋王戦五番勝負が2月6日(土)に、東京・将棋会館で開幕する。現在、棋王位を8連覇中の渡辺明棋王に対する挑戦権を獲得したのは糸谷哲郎八段だ。両者がぶつかるタイトル戦は2015年の第28期竜王戦以来となる。その時は渡辺が4勝1敗で竜王を奪取し、またこれまでの両者の対戦成績も渡辺の15勝5敗と、データ上は棋王に一日の長があるが、勝負は始まってみないとわからない。まずは最近の両者の様子から探っていこう。

棋王 渡辺明

 まずは渡辺棋王から。棋王の他に現在は名人と王将を保持し、そして王将戦では永瀬拓矢王座を相手に防衛戦を戦っている最中だ。渡辺にとって王将・棋王の連続タイトル戦は3年連続の6回目となる。タイトル戦を相次いで戦うことも、異なる相手と立て続けに戦うということも慣れているはずだ。

 ただ、一つだけ過去と異なるのが、今年度の対局の少なさだ。昨年に名人を獲得したことで順位戦を戦う必要がなくなったのが大きい。厳しい戦いによる消耗を避けることが出来たとも言えるが、実戦勘を養う機会を失ったとも言える。
もっとも、ここまでの王将戦の戦いぶりを見る限り、戦いの勘が失われているとはとても思えないが、2日制と1日制ではまた違うものがあるかもしれない。
46kiou_outlook_1.jpg
写真:玉響

挑戦者 糸谷哲郎八段

 対する糸谷八段。今期の棋王戦では勝者組決勝でこそ広瀬章人八段に敗れたが、敗者復活戦で永瀬王座を、そして挑戦者決定二番勝負では広瀬八段を連破して挑戦権を獲得した。タイトル戦への登場は2016年の第64期王座戦以来で、通算では4度目となる。

 今年度の他棋戦はと見ると、まずは銀河戦での活躍が目を引く。決勝では藤井聡太王位・棋聖に名をなさしめたが、準優勝は堂々たる戦績だ。他にも竜王戦では1組復帰を果たし、順位戦ではA級残留を決めている。求められるのはただ一つ、タイトル奪取のみだ。

46kiou_outlook_2.jpg
写真:常盤秀樹

 盤上での戦いぶりを予測してみると、両者ともに基本的には居飛車党なので、相居飛車の戦いになる可能性は高い(直近の直接対決では糸谷が阪田流向かい飛車を採用しているが)。

【第1図は▲8三角まで】

第1図は2年前の竜王戦1組における両者の対局だが、ここで渡辺が放った強手が△7八飛成だ。以下▲同玉△8六歩▲4七銀△8七歩成▲同玉△4六歩▲同飛△5五角の進行は後手が指しやすくなっている。第1図では△8四飛▲7二角成△6二金でも一局の将棋だが、△7八飛成は妥協を許さない渡辺らしい一手だと思う。この将棋はのちに自陣飛車が二枚並ぶという珍形(第2図)も現れた。

【第2図は▲7八飛打まで】

 ファンに魅せる将棋を指す両者の熱戦は、今期棋王戦でも幾度となく現れるだろう。その戦いぶりに期待したい。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています