豊島、初のタイトル防衛

豊島、初のタイトル防衛

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年01月13日

 豊島将之竜王に挑戦するのは羽生善治九段。2年前の竜王戦で無冠になって以来のタイトル戦登場だ。タイトル通算99期の羽生にとっては無冠返上とともに、大台の100期も懸かる。一方の豊島はタイトル5期で大棋士へと成長しつつあるが、いまだにタイトル防衛がないのは不思議なところだ。レジェンドを相手に棋界の最高位を守る戦いとなる。

第33期竜王戦七番勝負第1局

 第1局は東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」にて。矢倉の出だしから、後手の豊島が速攻を仕掛け双方居玉の大乱戦となった。

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撮影:常盤秀樹

【第1図は▲2二竜まで】

 馬と桂が急所に利き、手番を握っている後手が優勢だ。△5七銀と押さえるのが素朴ながら厳しい攻め。以下▲6四馬に△6八銀不成▲同金△8八飛成で2枚の金が狙われた先手は受けにくい形になった。勢いよく攻めた豊島が開幕戦を制す。

第33期竜王戦七番勝負第2局

 第2局は愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」にて。角換わりから先手の豊島が早繰り銀にし、後手もじっくり受け止めて持久戦となった。

【第2図は▲8七歩まで】

 後手が強く踏み込んで、このまま寄せ切れるかの勝負になっている。ここから△7六銀が鋭い寄せ。▲5一角△4二銀▲同角成△同玉としてから▲8六歩と手を戻したが、△7九角▲8八銀△7八角と絡みついて先手は受けがなくなった。鮮やかに寄せ切って羽生が追いつく。

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撮影:日本将棋連盟

第33期竜王戦七番勝負第3局

 第3局は京都市「総本山仁和寺」にて。相掛かりから形勢が揺れ動く大熱戦となった。

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撮影:日本将棋連盟

【第3図は▲6四馬まで】

 図から△4二歩がスペースを埋める受け。対しては▲9四角と詰めろを掛ければ先手にも勝機十分の将棋だったが、実戦は▲5三銀と駒を渡す攻めをしたため、△同歩▲同歩成に△8七銀▲同玉△5七竜から即詰みに打ち取られた。終盤の競り合いを制して豊島が2勝目。

第33期竜王戦七番勝負第4局

 第4局は福島市「吉川屋」で行われる予定だったが、羽生の発熱と現在の社会情勢を鑑みて延期に。第5局の日程と会場を繰り上げて行うこととなった。
あらためての第4局は鹿児島県指宿市「指宿白水館」にて。横歩取りの持久戦から、飛車交換になって戦いが始まった。

【第4図は△1八角成まで】

 自然な攻めは▲8六香だが、△8二歩と低く受けられて継続が難しい。▲9二香が俗手ながら好手。△2六飛にも構わず▲9一香成と取り、△4六飛に▲4八香が堅い。以下△2六飛に▲8一成香△同玉▲8四桂で寄せに入った。うまく手をつないだ豊島が制勝して3勝目。

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撮影:金子光徳

第33期竜王戦七番勝負第5局

 第5局は神奈川県足柄下郡箱根町「ホテル花月園」にて。第1局同様の矢倉の出だしから、今度は持久戦となり後手は雁木に構えた。先手に分のある戦いだったが、うまくしのいだ後手が逆転に成功。

【第5図は▲4六飛まで】

 図で△5一銀が味の良い受け。先手も▲4一金の俗手でしがみつくが、△4四桂が飛車の利きを遮断しながら攻めも見た攻防手。▲2六飛と△3六との筋を避けたものの、△2五歩▲同飛△5六桂で後手の一手勝ちコースに入った。
豊島が4勝目をあげ、シリーズは4勝1敗で制した。4度目の防衛戦でついにタイトル初防衛。一方の羽生は久しぶりのタイトル戦となったが復位はならず。だが、スーパースターの復活に大勢の将棋ファンが沸いたことだろう。また大舞台で戦う姿に期待したい。
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撮影:中野伴水

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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